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指を絡め終えた本宮くんは、司会者に向かって言う。
「手を繋いだから、もう行っていいんだろ?」
すると、司会者はにっこり笑って答えた。
「あ、その状態で記念撮影するから、ちょっと待って」
その直後、ステージの下から、大きなカメラを持った生徒が3人上がってくる。
腕には、「写真部」と書かれた腕章をしている。
彼らは、正面から、斜め前から、下からといろいろな角度から戸惑う私たちの写真を撮る。
「すみません、もう少し笑って!」
そう言われるけど、この状況でどう笑えばいいの?
無理でしょ!
結局、私たちは、微妙な表情のまま、カメラに収まった。
その後、司会者が締めの言葉を口にする。
「はい、お2人ともありがとうございました! じゃ、明後日の後夜祭まで、そうやって仲良く過ごしてくださいね。さぁ、皆さん、次期ベストカップルの2人を大きな拍手でお見送りください」
私たちは、拍手に見送られながら、ステージを下り、中庭を抜けて、元いた教室へと向かった。
けれど、校舎内に入って、周りに誰もいなくなっても、繋いだ手はそのままだった。
「あの、本宮くん?」
私は、そっと声を掛ける。すると、
「ん?」
と、そっけない問いかけが返ってくる。
「あの……、手……」
私は、そう答えるけれど、
「ああ」
と返事をしたものの、一向に離す気配はない。
結局、私たちは、誰ともすれ違うことなく、外の喧騒が嘘のように静まり返った教室へと帰ってきた。
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