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この瞬間を忘れたくないな。
思った瞬間、口にも出していた。
隣で青柳が繋いだ手を揺らして笑う。
「川和は本当すぐ顔と口に出る」
「悪いか」
「悪くない。そんなところが、好きや」
一度恋人になった青柳の甘さは想像を絶する。失語に陥った暁は赤い顔を隠すため逞しい腰に抱きついた。
けれど大きい青柳の体は難なく暁を受け止めてしまう。
結局いつまでも抱き合う二人の足元で草を食む鹿が目のやり場に困ったように、ケーンと鳴いた。
おしまい(2021.10.22)
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