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「─そうだった……僕はもういないんだった。
高校3年の冬僕は、あなたとのデートでその向かう途中でトラックに轢かれて死んだんだ。なんで忘れてたんだろう。だから、僕が喋っても反応がなかったりしてたのか。」
僕は、気づいていなかった。いや、信じたくなかっただけだ。自分が死んだという事実を知りたくなかったんだ。
「久しぶりにここに来たよ」
あなたは、そう言った。すると、少し雨が降ってきた。その雨は小降りで、霧雨のようだった。
「僕はずっと…あなたに返ってくることのない話を喋り続けてたってことか……」
馬鹿みたいだ僕はずっと一人ではなしていたのだ。一体僕は、何をしていたのだろう。あなたが喋っていたのは僕ではなく明日、夫となる人だった。
「じゃあ、僕…幽霊ってことじゃん…」
僕は自身を悔いた。顔に霧雨が降り注いだ。
「ありがとう…」
彼女は、たった一言そう言った。
「違うよ……ありがとうなんて。僕は、あなたに謝らなきゃいけない!」
そう僕は、あなたにたくさん謝らなきゃならない。
「急にいなくなってごめんね……デートすっぽかしてごめんね…ずっとずっと一緒にあなたのそばに居たかった…本当にごめん……」
僕は、届くはずもない言葉を言い続けた。そして、僕は届かないと分かっていたが続けて言った。
「本当に……ありがとう、ずっといてくれてありがとう…」
僕は、最後にこう言った。
「ずっと…ずっとあなたのことが大好きです」
あなたの、結婚前夜が終わりを迎える。
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