乙女心と秋の…

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今 どこにいますか? 「貴方の心はどこにいますか?」 茜と悟 二人は付き合っていた。 二人は高校三年生 幼なじみだ。 三日後、二人にとっては最後の学園祭。 クラスで催す喫茶店の買い出しに来ていた。 買い出しも一段落終えファストフードで少し休む事にした。 二人はフライドポテトと、茜はホットミルク、悟はホットココアを飲んでいた。 二人の会話が止まったのは、少し離れた前の席に若い女性が座っていたからだ。 その女性に悟の心がクギ付けになったからだ。 「悟 貴方の心は、今 どこにいますか?」 茜は少し不安になった。 悟は口をポカンと開けてず~と女性を見ている。 女性も、まんざらでもなさそうで悟の方を見ている。 二人は見つめ合ったまま…… まるで、運命の人にでも会ったように…… 女性は席を立ち、飲んでいたカップを手に持ち、こちらに近付いて来た。 二人のテーブルにカップを置き前に座った。 「さとる だよね?」 女性は悟を知っているのか? 「えっ、はい。僕は悟です」 悟は緊張しながら応えた。 「やっぱり!」 やはり、女性は悟を知っているようだ。 「あの…僕を知っているのですか?」 悟はおそるおそる聞いた。 「ハッハハ!俺だよ!俺!」 女性は突然笑い出した。 「えっ?」 悟と茜は、思わず声を出した。 女性はバッグから、液体の瓶を出し、ティッシュペーパーに振りかけて、顔をこすりだした。 “ゴシゴシ” 付けまつげを取り、顔の化粧を取っていた。 「ジャーン!俺だよ!」 女性はなんと、二人の幼なじみの昇太だった。 「悟、茜、久しぶり!どう、俺 綺麗だった?」 昇太は笑いながら二人を見ていた。 三人は中学校まではよく遊んでいた。 高校に入ってからは、同じクラスになる事がなかったから、遊ばなくなった。 「昇太、お前だったのか?凄い美人がいるからびっくりしたよ」 「本当よ!びっくりしたわ」 「今度の学園祭、俺達のクラス仮装大会やるんだ。その予行演習みたいなもんだ!どれだけ本物の女性に見えるかテストをしていたんだ」 「なーんだ、そうだったのか、本当にびっくりしたよ」 「冗談じゃないわよ!」 三人は、懐かしさもあって少し話しをした。 「じゃ、俺 行くわ!二人の邪魔しちゃ悪いからな!」 「んっじゃまたな!」 「ん、またね~!」 二人と一人は別れた。 昇太は去って行った。 「茜、びっくりしたよね!」 「あ か ね!」 茜の目は、去って行った昇太を追っていた。 「茜~、今 どこにいますか?」 茜の心は…… 今 どこにいますか?       終わり
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