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30 狡くて愛しい、僕の番②
Ω性を存分に開花した柚希が、和哉のものを飲み込むことは苦ではなかったのかもしれないが、それでも弟のものはちらっと見ただけでも、たぶん、かなり、ひくほど大きい。
和哉が僅かに呻きながら腰を進めてきたことに愛おしさが増し、励ましてやりたい気持ちになった。
蕩けつつもまだまだ狭い誰かを受け入れるのが初めての柚希の中へ、和哉は何とか奥まで全てを埋めきると、柚希はもう胎の中がいっぱいになって苦しい程だ。そして柚希はそのまま、背中越しに10年間の和哉の想いの重みを、熱い湯につかった身体のようにじんわりとびりびりと感じながら受け止め、悩ましく吐息をはうっと吐いた。
「かずぅ、きもちいい?」
艶めかしい兄の声と緩々と振られる尻に眩惑されながら、和哉は額から汗を滴らせる。
「ゆずきの中、熱い……。ずっとはいりたかった……。んっ、きもちいいっ。ああ、ゆずき、ゆずき」
「かずので、俺もきもちいいよ?」
普段と同じ優しく気遣うような柔らかな声を上げたら、柚希の中でびくびくっと和哉自身が震えてじわっと濡れる感覚がした気がした。その刺激に柚希がぷるぷるっと震えて腰を揺らめかせると、和哉が堪らなくなって二度ほど大きくぱちゅんっと、交接部を今出したもので泡立たせながら抜き差しをした。
それだけで柚希は目の前に星が飛ぶほどの快感に、頭がついて行かれずに上に逃れようと腰を引いたがとしたが、和哉の大きな掌がそれを許さずがしっと柳腰を後ろから固定してしまう。
怖ろしい程の圧を背後の弟から感じて、柚希は思わず悲鳴を上げた。
「カズ! う、動かないで。俺はじめてなんだぞ! やさしく、して!」
はじめて、に反応する素直な弟は、真っ白な柚希の背中に息が降りかかるほどその呼吸を荒くした。
「はあっ、はあっ……。ん、柚希……。も、動いていい? 噛んでもいい?」
答えを待たずしてもう、ずっと兄の名前を色っぽく情熱的に呼びながら柚希の首筋から肩口までをがぶがぶと甘噛みしてくる。
元来聞き分けも良く我慢強い弟が、柚希の身体でこんなふうになってしまうことに仄暗い悦びを覚えて、柚希は妖艶な微笑みを口元に這わせた。
しかしうつぶせられたこの体勢では、貪る和哉の顔が背後で見られないのが寂しい。
慈しんできた愛らしい美少年は今では凛々しい青年になって、幼い日の面影の残る美貌を歪めながら、今まさに激しく柚希を攻め犯そうとしているのだろうか。
想像するだけで胎の奥の方がぎゅんっと切なくなり、締め付けられた和哉はまたも達しそうになるのを必死でこらえた。
(カズ、顔が見たい……)
柚希は一生懸命後ろを振り向こうとして身をよじると、その紅顔を見る前に唇を塞がれて、荒い吐息交じりの口づけを交し合った。激しい接吻はまるで獣の番の様で、和哉の唾液が滴り柚希の口内まで流れ込んでくることに興奮すら覚えて、んくっと柚希は喉を鳴らす。
(気持ちいい……。こんなに気持ちいいものなの? 番になったら、もっと気持ちいいの? なりたい、和哉と番になりたい)
迸る互いの濃厚な香りに包まれながら、すでにもう自分の中のからからに乾いていた器のようなものが、器ごと大きな温い湖の中にひたひたに満たされていくような不思議な幻想を覚える。もう二度と渇きを覚えることはなく、ずっとこの人の愛情で満たしてもらえるのだと思うと全身全霊震えるほどに嬉しかった。
(重たい……。カズくん。大きくなった)
小さな頃はまだ背中にこうして飛び乗ってきてもころんっと寝返りを打ったら寝台に転げ落とすことも可能だっただろう。
だが今はもう、寝台に伏す柚希の掌は痛みを感じないまでも上からおさえつけられていてびくともしない。
(もう逃げられない……。俺、一生、和哉のものになるんだ)
狂おしい気持ちと沸き立つ興奮で身体はますます熱くなり、つながったままの一点が甘く時には辛い程の疼きを疼きを柚希に送り続ける。
続く口づけにそのまま舌を絡め吸い上げられながら、ぐりぐりっとすぐに奥まで長大な弟のもので想いの強さを身体に刻みつけられて柚希は息を大きく吸い込むと、「ひぃ」っと声を漏らして身悶える。
「柚希、動くよ」
遠慮なく奥まで貫かれていく道すがら、先ほど散々焦らされたイイところを摺り上げられてびくっと身体を震わせると、柚希がその快感を貪ろうと意識する前にいきなり激しい抜き差しが始まった。
そのまま今度は奥までとんとんとんとリズミカルに叩かれるのがもう気が触れそうになるほど心地よくて、柚希は黒髪を振り乱して白い背中をよじりながら身悶えた。和哉はそんな兄の姿にさらなる欲を呼び起こされて、両手で腰を掴むと激しくピストンをはじめた。
初めは顔を上げられていた柚希も、どんどんと高く腰を抱え上げられ、片膝すら立てて激しく犯してくる和哉の勢いに飲まれて、布団に顔を押し付けた体勢になってくぐもった声を漏らす。
腰を思うさま打ち付けてくる和哉の放埓さがなんだか小さな悪戯をしては柚希に気づいてもらえて笑い転げていた、あの幼い頃の無邪気な雰囲気と似て感じてしまう。
それは本当に和哉が積年の想いを成就し、なぜかこみあげる笑い声を抑えられずに自分を犯しているのだとはもう柚希は気が付くことができなかった。
柚希自身はもう悲鳴なのか嬌声なのか自分でも分からぬ声をあげ、そこからはもうゴールに向かって一直線に進もうとするかのような絶え間ない猛攻を受ける。何度後ろで達し、おつりで前までも何度爆ぜたのか分からぬし、和哉も達して達してもすぐに挑んできたのでこれが何度目かの交接かも分からない。
いわゆる発情期に入った身体はより柔らかく弟を包みつつ、イクたびに締め付け軟体動物のように正体をなくした身体はそのたびに弟の腕に強引に抱え上げられた。
もう時間の感覚も、ここがどこなのかも忘れ始めた頃、耳元で低く滑らかで項の髪の毛が逆立つほどぞくぞくするほど良い声で和哉が囁く。
「柚希、ずっと傍にいるよ?」
それは幼い日に誓った約束。もう半ば意識がもうろうとした柚希の薄紅色に染まった項に牙を突き立てて、か弱い悲鳴を上げた兄の声を耳に天上の調べのように聞きながら、和哉は尻の筋肉を蠢かせて思うさま腰を振り、その奥ですべての欲をいつまでもいつまでも注ぎ込んでいった。
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