番外編 夏祭りの約束 終章

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番外編 夏祭りの約束 終章

☆久しぶりに和哉と柚希、それにお子達を書けて楽しかったです。  ここまでご覧くださりありがとうございます。☆      結婚して何年もたつのにこんな風に独占欲をぶつけてしまうのはいかがなものかと正気の頭なら思うのに、他のものにも慈愛に満ちた眼差しを向ける柚希の全意識を自分だけ欲しくてたまらない。  和哉は時に苦し気なほど身を震わせる柚希に向かい、ただ我儘にがつ、がつと自らの欲望を穿ち続ける。 「あ、あっ!!」 「柚希、僕だけを、愛して」  もう柚希が半分意識が飛び始めていると分かっているからこそ、日頃は胸の奥にしまっているが二人きりの時間にはもう柚希は自分だけのものだという狼の本音が飛び出してしまう。 「ひうっ!」  ぐりぐりっと感じ過ぎて泣きを入れて善がる柚希の奥の壁を目掛けて強く腰を押し当てたら、中が強く収縮して柚希はびくびくっと身体を痙攣させると、声もなく湯船に向かい身体を崩れさせた。和哉は柚希の顔を護ってぐいっと上半身を持ち上げが、灼熱の杭を抜くことはない。というよりもα男性特有の亀頭球が柚希の中で膨らみ抜けないのだ。  和哉はフーフーと荒く獣のように息を吐いてから柚希を抱えて振り返り、湯船の縁に一旦腰を下ろした。意識が朦朧とした柚希は水滴を伝わせ鶴首をしおれた花のようにくたりと落としているのが可哀想だがぞくっとするほど色っぽい。鋼の筋肉が落ちてからはなお長くすらりと美しい脚を和哉の腰を跨ぐようにいやらしい形で開かせ、胸を抱えて自らにももたれかからせた。 「柚希の中、絡みついて俺を愛撫してくれてる。きもちいいよ?」    ぐったりした柚希の中は熱くちゅくちゅくと和哉を吸い上げてくる。和哉は少しの間眉間をよせ、悩ましい表情を浮かべてその甘い快感に酔いしれる。ぴちゃり、ぴちゃ、と尻に熱いお湯がかかり湯舟が波打って水音をたてる。それ以外は和哉の少しだけ乱れた息だけが響くほど静かだ。  繋がったまま抱き上げている柚希の背中が時折、和哉の物に広げられ中から込み上げる心地よさに震えて、無意識の癖に婀娜っぽい吐息を漏らすのが和哉の耳を甘く打つ。 「柚希……」  柚希の体格にしては小さな頭を掌で掴んで赤い唇を貪っていると、彼が薄っすら瞳を開けたから和哉は遠慮なく追撃を開始した。 「あ? あっ、あっ!」  鍛えた体幹を如何なく使い、下から柚希の尻を突き上げる。柚希の内股が震えて閉じかけた脚を和哉は自分の脚で開かせて再び腰を使い始めた。  ぱちゅん、ぱちゅんっといやらしい水音が立ち、そのたび湯船も揺れて蒸気が立ち上る。  柚希はぽろぽろと涙を零しながら「もう、むり」と嫌々をするように首を振って逃れたがったが、胸の前で和哉の太い腕に抱かれ身動きもとれないまま腰を使われもうろくな抵抗をすることもできない。桃色に染まる身体で身悶え、ただ頭を振ることしかできなかった。激しくも濃厚な交接にΩの貪欲な身体だけは変わらず内癖をうねらせ入り口を時折すぼめて夫を求めてくるが、柚希自身はもう疲労の限界なのかもうされるがまま、和哉の腕の中揺さぶられるまま激しく愛される。  燃えるように熱くなった胸や腹を撫ぜまわしていた手で、胸の先をぎりっとつねれば、柚希は何度目かの絶頂を迎えて頭をがくっともたげてもはや息も絶え絶えだ。その感じやすく高まった身体を未だ離すこともなく和哉は意地悪く耳たぶを齧った。 「ああ……。柚希もう、完全に発情してるよね? 子宮が降りてきてる」 「んっ……。あああっ」 「僕のに吸いついて……。これじゃ赤ちゃんできちゃうかもね?」 「……っ」 「そしたらまた、僕はまた、妬いてしまうかもな……」  中で膨らんだ瘤のせいで柚希の尻がまだ和哉の腰にくっついたまま、外れないのをいいことにゆるゆると腰を使ってさらに苛めば、もう何も考えられなくなっているのか柚希が快感だけを追い出して無意識に自分のいいところに和哉自身を押し当てようとする。  ひっきりなしに喘ぎながらも自らも腰を振る柚希の姿に、和哉は口の端を吊り上げるようにして嗤い、この瞬間を味わいつくすためにさらに腰をグラインドさせた。 「んあ、はあ、はあっ」 「ああ、柚希。可愛い。僕だけの、柚希!」  もう普段の爽やかで明るい人妻の柚希ではなく、和哉だけを求め、和哉だけを愛する、淫らな番となって快感を追いだす。  それが震えがくるほど嬉しくて、和哉はその瞬間ぐっと奥壁押し付けるようにどくどくと放てば、柚希の中がまた大きくうねり和哉のものを一滴でも零すまいと強い脈動を繰り返す。その動きに刺激され、和哉は番の肩口にあてていた頭をもたげ、項にまた強く噛みつくと柚希は「ああっ!」と悲鳴を上げて今度こそ芳香を放ちながら意識を手放してしまった。 ※※※  柚希が真夏の発情期に入って凡そ一週間。  幼い息子たちにはまだ発情期の存在をはっきりとは伝えられていないため、発情期になるたび二人は急な御用事で旅行に行っていることになっているのだ。ともに仕事を休んでくれていた和哉と共に自宅から息子たちを実家に迎えに行った時、昼間に沢山雨が降ったからか少しだけ連日の熱波が落ち着いて秋の気配を探せる風が吹いてきていた。  普段ならば発情期に入る前に息子らを両親に預ける算段や保育園でお迎えに行く人の変更の連絡をしたりするのだが、今回はいきなりのことで柚希の相手や世話をしながら和哉が全て整えていった。 「今回も色々と、ありがとうね。急な発情で、その……。準備も何もなくて。母さんたちにも和哉にも迷惑かけちゃった」 「いいのよ。私も今、仕事していないし、敦哉さんもお盆休みたっぷりとってくれたし。みっちゃんはたまにぐずって泣いてたけど、咲ちゃんはいい子だったわよ」 「ありがとうございます。カズも、本当にありがとうね」 「柚希はいつも頑張りすぎなんだから。こういう時こそ番に頼ってくれればいいんだよ」  柚希は発情期のたび周りに迷惑をかけることを、しきりにすまながっていたが、和哉としては年に数度、柚希を自分の腕の届く範囲に囲い込み愛しぬける発情期が楽しみになっている。誰に遠慮することもなく柚希と二人きりの蜜月を過ごせることが、αとΩに生まれた特権のように感じ、色々あったがやはりこの性に生まれ柚希を得ることができた喜びを再確認できる。  だが発情期が終わった後、日常に戻る時。毎度柚希を自分から引きはがされるようなひりひりとした痛みを胸に感じているのはいい大人として流石に誰にも言えないでいる。  夕食を皆で囲んだのち、実家のリビングから見渡せる小さな庭に出て、家族で花火をすることになった。 「ママたち祭りの日、花火見られなかったかもしれないからって、咲ちゃんとみっちゃんが二人が帰ってくる日にやろうって楽しみにしてたのよね」 「ボク花火1人でもつの!」 「だーめ。蜜希はまだ小さいから危ないでしょ?」 「大丈夫だからあ」 「でも一緒にもとうね?」  祭りの時はあれほどつんつんしていた蜜希も、やはり久しぶりに会えた両親に、特に柚希にべったりで腰の辺りにべたべたとくっついたり抱っこを強請ったりと忙しい。それは発情期という蜜月の間、柚希を独占していた和哉も同じく。番と離れがたい気持ちでいるため蜜希と共に花火に興じる柚希の後ろにぴったりと立って二人を見守っている。そんな中、大人しい咲哉は何となく一歩引いて二人を見つめている。  だが咲哉も柚希に話したい沢山あるのだろう、何か言いたげな顔をして発情期後はよりしっとりと匂い立つ色香を湛えた柚希を敬うような眼差しで、うっとり眺めている。 「みっちゃん。スイカ食べる?」 「食べる!」  リビングから顔を出した桃乃が蜜希の注意を向けている間に咲哉が柚希と隣に佇む和哉の元にやってきて柚希とよく似た黒目勝ちの大きな瞳を優し気に細めた。 「柚パパ。元気? お身体大丈夫?」  まだ六つだが、聡い咲哉は何かしら敦哉から聞き齧っているのかもしれない。蜜希のことは我儘な性格も含めてただただ可愛いと溺愛している敦哉も、幼いながらも思慮深い咲哉のことは一目置いているように和哉には見える。そう。幼いころから敦哉が和哉のことを一人前の男として扱ってきたように。 「大丈夫だよ。ちょっと疲れたけど、気分もいいし、ずっと和パパがついていてくれたからね?」  そう言ってにっこりと咲哉と似た涼し気な美貌に笑顔を浮かべた柚希を見ると、また和哉だけの番から息子たちの母であり職場でも頼りにされる『一ノ瀬さん』に戻っていくようで和哉の中にまた性懲りもなく僅かな寂寥感が浮かぶ。 「僕、ちゃんと夏休みの宿題終わらせたからね? それでじーじとばーばが偉かったねって、僕とみっちゃんを水族館に連れて行ってくれてね。イルカのショー、みっちゃんが一番前で見たいって言ったからみんなで一番前に座ったら、お水がね、じゃばーって出てきて桃ばーばのスカートも全部濡れちゃってじいじも大慌てでね」 「うんうん」  沢山お喋りをし始めたら止まらなくなった咲哉の頭を愛おし気に撫ぜつつ、柚希は何故か和哉の手を後ろ手にこっそりという風に握ってきた。  その仕草だけでも嬉しくなってしまう自分の単純さに呆れつつも和哉が手を握り返したら柚希が振り向いて円やかな笑みを向けてきた。 「何、寂しそうな顔してんだよ」 「……」 「俺だってさ、和哉と離れんの、寂しいって思ってるんだからさ。だから、その……」  繋いだ手の指先を絡めもぞもぞと動かされながら、恥ずかしそうにつぶやかれた思いがけぬ告白に和哉が胸を熱くしてると、見上げてきた貌は綻んだ白いムクゲの花のように爽やかに美しく、再び目を奪われずにはいられなかった。 「明日、早く。帰ってきてね?」 (柚希、愛してる)  そんな風に甘えられたら堪らなくなって。  和哉は家族が見守る中で腕を伸ばして柚希を強く抱きしめずにはいられなかった。                                 終                      
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