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番外編 パヒューム・ディライト 2
追記
☆こちらで声をかけさせていただいておりましたおかげでアルファさんの順位上がりました😭
本当にありがとうございます❤
引き続き様子を見に来ていただけましたら幸いです🙇♀️
☆久々の和哉と柚希をこちらに投稿出来て、安心感でまた頑張れます。
しかし子供時代なのでアダルト時代の濃い奴も書きたくなりますね!
和哉の母にとって薔薇は特別な花だったのは、そもそも祖母の影響なのだそうだ。薔薇園に向かう道すがら、敦哉がそう話してくれた。
祖母は庭で丹精込めた薔薇を育てているほど愛していた。
一人娘に名づけるとき、香りの女王たる、ダマスクローズの香りに感銘を受けて、つけたのが「和香」という名前だったらしい。
「和くん、お母さんの薔薇ってどんな色の薔薇?」
「結構、ピンク」
後ろから彼にしてはいささかぶっきらぼうな返答が聞こえてきた。和哉はこのところたまに考え込むような仕草を見せていた。それが気になって、柚希も昨日はなんとなく考え事をして眠れなかった。
相槌を打とうと思ったら、ふわっと大きなあくびが先に一つ飛び出した。
「ふわあ。……そうなんだ」
(結構、とは? 濃いピンクということなのかな?)
和哉の家のリビング、写真たての中で微笑む和哉の母は甘く愛らしい顔立ちで、どちらかと言えば綿あめみたいな薄紅色の花が似合いそうな人に見えた。
まあ、生まれた時の親の期待やイメージで名前が決まるのだろうから、本人のイメージと少し違っているのは仕方がないのかもしれない。
「おばあちゃん、派手好きだから」
「そうなんだ。どの薔薇だろう」
薔薇園はイングリッシュローズ、ハーブガーデン、殿堂入りローズ、ちょっとした軽食を変えるフードスタンドなどコーナーごとに分かれている。
地図を片手に和哉を引っ張っていた柚希の手を、和哉がぐいっと逆に引き直した。
「なんでバラバラに歩くの?」
「バラバラって? 洒落?」
「……へんな冗談言わないで。父さんたちとわざと離れたでしょ?」
「わざとっていうか……」
言葉を繋ぐ前に柚希は明るい日差しの中に立つ和哉に見惚れてしまった。
「かっこいい……」
思わず感嘆の声まで漏らしてしまった。
白い薔薇を背負って立つ和哉は、身に着けているのはシンプルな白いTシャツにモカブラウンのパーカー、グレーのパンツというシンプルな出で立ちだが逆にそれが王子様みたいに見えた。
(年下の小学生相手に王子様とか思うなんて、口に出したらやばいかもしれないけどしょうがないよな。事実だし。うん)
「カズくん、薔薇背負うの似合いすぎだね」
「からかわないで」
ぷいっと顔を背けられて、あからさまに落ち込んでしまった。自分自身は『ユズくんって思春期こなかったのかしら?』と母に言われるほど母子仲が良いし、大切にしている自負がある。だから周囲の中二男子が親を『うちのババアがさあ』なんて言っているのを聞くと信じられない気持ちになる。
そこはやはり母と二人きりの生活が長いせいか、自分が母さんを守らなきゃいけないという気持ちが強かったというのもあるだろう。
たった一人の家族なのだから。
(たった一人の家族っていうのは、和くんと敦哉さんも同じだよな。お互いがすごく大事なのはうちと一緒のはずだよ。どうしよう……。両親の再婚で思春期に入ったカズ君がグレちゃったら。俺と口もきいてくれなくなったら、せっかく仲良くしてきたのに寂しすぎる)
しょんぼりして握っていた腕を下ろしてじいっと和哉を見つめていたら、逆に和哉に腕を引っ張られた。
「柚くん、写真撮る人の邪魔になってる」
「あ、すみません」
柚希の後ろは柵に伝うようにピンク色の薔薇が固まって咲いている場所があった。色々考え事をして柚希は周りが見えなくなっていた。
クールな声に突き動かされ飛びのくと、薔薇と赤ちゃんを抱っこするお母さんの背後に来てしまった。
スマホのカメラを構えたお父さんが申し訳なさそうに頭を下げているのが見えた。
「柚くん、こっちに来て」
「すみません~! 俺邪魔になっちゃってたな」
「いいから、行こう」
今度は和哉が柚希の手を取って、引っ張って力強く歩き出す。
(和くん、手ぇでっかくなった)
身長はお互い伸びているからまだ和哉の方がずっと小さい。でも繋いでいる手の大きさ、伸びやかな腕の付け根の肩幅の広さに、きっといつかは自分より大きく逞しく、どこもかしこも優れた人になりそうな予感が漂う。
「確かこっちだから。母さんの薔薇」
長い足で迷いなく先導して歩いてくれる。和哉の背中の頼もしさに、柚希は彼を見守り健やかに共に成長していきたいという気持ちを強く感じた。
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