『分岐点』

3/6
前へ
/9ページ
次へ
 ずっと祥平のことだけ見てたから、あたしはすぐに気づいたんだ。彼の目がいつも追ってる相手に。  ……それが自分ではなかったことにも。  誰にでもオープンにはしてない、ってかむしろ周りには絶対知られないようにしてたとは思うよ。  でも祥平はあたしの前では油断しちゃうのか、わりと感情だだ洩れになってること多いからね。  あたしにバレてるってわかった時はさすがに慌ててたけど、その後はもう開き直って『相談相手』に指名されたようなもんだったんだよ。  それはそれで、二人の時間が取れて嬉しかったのも確か。  ──よく考えたらすっごい不毛な気もするから、深くは触れないようにしてたけど。 「へぇ。勝算あるんだ?」  揶揄うようなあたしの言葉に、彼は眉を下げた情けない顔になった。 「ないよ。あるわけないだろ。でもさ、麻帆って結構モテるみたいなんだよなぁ。好きだっていう奴、俺が聞いただけで何人かいるし。まあ、あんだけ可愛いし当然か」  あたしの前でよく平然とそんなこと言えるな。  いや、あたしの前だからか。  それだけ信用されてるってことなんだろうし、祥平にとってあたしはもう『親友』の括りなのかも。確かに付き合い長いだけじゃなくて、気心知れてるもんね。  ホント気楽に話せるから、お互いに。……お互い、に?
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加