『分岐点』

5/6
前へ
/9ページ
次へ
 大丈夫、麻帆はアンタのこと好きだよ。  子どもの頃からずっと。あたし、あの子のことはよくわかってるから。さすがになんでも、とまでは行かないけど、きっと他の誰よりも詳しいよ。 「告白すんのはまあいいんじゃないの。思い切ってぶつかって、玉砕すんのも青春じゃん?」 「お前、さり気にヒドいこと言うなぁ。振られんの前提かよ」  敢えて軽く口にしたあたしに、祥平はちょっと拗ねたような表情になった。この程度の意地悪言うくらい許されるでしょ? 何も知らない鈍いアンタにはさ。 「いや、こういう場合最悪の事態を想定して動くべきじゃない? 自信満々で崖の上から突き落とされるより、『どーせダメ元』からの逆転ハッピーのが絶対いいじゃん。気分的に」 「……まあ、な」  ちょっと真面目な口調になったあたしに、祥平は不承不承って感じで頷いてる。 「けどさ、明日ってのはどうかなぁ。木曜日でしょ? 次の日も学校あるんだよ? 休みの日か、……せめてその前の日にした方がいいって!」 「うん、お前の言うこともわかる。断られたときとか、ちょっと時間おける方がいいんだろうし。それでも、やっぱ明日がいいんだ」  無駄に力入ってるのは自覚してるあたしの説得に、それでも祥平の決意は揺らがないらしい。どうしても、明日でないとダメなの……? 「明日は麻帆の誕生日だからさ」  もちろん知ってるよ。当たり前じゃん。だから言ってるんだよ。  だって麻帆の誕生日は──。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加