La vie en rose.ーおばさん前夜ー

明けた朝は、拍子抜けするようないつも通りの朝だった。

でも早速嫌なことがあった。
今日は、随分前から楽しみにしていた家族３人での動物園だったのに、年齢と共に出世したパパは急な会議で呼び出されちゃった。
結婚で私は支社に移ったけど、会社のことは同じ職場で働いていたのだもの。事情は分かるわ。
でも、パパの運転する車で楽々のおでかけだったのに、やむなくバスでのお出かけになっちゃった。

バスではたまたま１席空いていたので、息子だけ座らせて私は荷物を抱えて立っていた。
停留所でお客さんが乗ってきて、バスはどんどん混雑し始めた。
まだまだ動物園は先。
（こんなはずでは……）
憂鬱な気持ちになって、思わずため息が出ちゃった。
息子が私を見上げ「大丈夫？　ママ」と気遣ってくれる。
「大丈夫よ」と返事すると、息子はにこっと笑ってくれた。

我ながら、本当にいい子に育ってくれていると思っちゃう。

その子が
「あ」
と声を上げた。
見ると、腰の曲がったお爺ちゃんがバスのステップを上るのも大変そうに乗ってきた。