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息子はほんの少し考えて、席を立った。
私に似て内気な息子。
何も言わずに、お爺ちゃんの目の前で移動して席を空けた。
本当にいい子。
お爺ちゃんにさりげなく席を譲ったのね。
その時だった。
大きなギターバック持って、イヤホンつけてシャカシャカとよく分からない音楽を聞いていたバンドマン風のサングラスかけたおにいさんが、すかさず息子が空けたその席に座った。
小さな息子が戸惑って、うるうると涙目になっていた。
無言で席を空けたから、お爺さんに息子の真心通じなかったばかりか、バンドマンにも分からなかったみたい。
(大体、イヤホンやサングラスなんかつけてるから、周りが見えないのよ!)
私は憤った。
「そこは、こちらのお爺さんに席を空けたんですよ」
え?
誰が言ってるの?
真理ちゃん?
一瞬、真理ちゃんの声が聞こえた気がした。
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