恋の味

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あ!バレンタインだ! この箱!私が和樹に渡す為に、手作りで作ったチョコが入ってる箱だ!! 思い出したが、改めて渡すと思うと恥ずかしい。ただ、和樹もずっと待っててくれている事に申し訳なく、思い切って差し出した。 「これ!これ渡す為に呼んだの!」 和樹に驚いた様子はなく、黙って受け取った。 段々と記憶を思い出してきたが、結構な自信作だったはず。 「開けていいか?」 「うん。」 なんだろう。すごい緊張する。 そうだよね。この瞬間がなければ付き合わなかったかも知れないもんね。 和樹は一粒チョコを口に放り込んだ。 味は•••どうだろう••• 「うん!うめぇ!梨花サンキューな!」 和樹は大胆にも、残りのチョコを全て口に詰め込んだ。 何もそんなに急いで食べなくてもいいのに•••。 「あ、じゃあゴミは貰っとくね?」 そう言って(から)になった箱を受け取り、自然と私は笑顔に満たされた。 「じゃあ、俺行くわ!」 和樹は突然にもそう告げ、走り去ってしまった。 「お返し待ってるからねー!!」 私は走り去るその背中に叫び、和樹は振り向かずに高々と拳を突き上げた。 もう。せっかちなんだから•••。 あ、まだチョコ残ってる。 空になった箱には一欠片のチョコがまだ残っていた。
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