借金男

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恐る恐るドアノブに手をかけ開けると、そこにも人の姿は見当たらない。 「なんだこの部屋。机と椅子しかないじゃないか。」 誰もいないなら金目の物でも盗もうと思ったが、どれも古くて高くは売れないだろう。 それに金は借りても、犯罪に手を染めるのは御免だな。 部屋を出ようと、後ろを振り返るとそこには老紳士が立っていた。 「おわっ!」 思わず声を出して驚いたが、老紳士は微動だにせずこちらを見ている。 「入店に気づかず、申し訳御座いません。」 そう言って深々と頭を下げる老紳士。 「あっ、いやぁ、俺客じゃないんすよ!成り行きで入ったっていうか•••」 老紳士は話を聞かず、部屋の中心にある席に案内しようとする。 急いで家を出た為、金なんか一銭も持ってない。 そうとは知らず、老紳士は椅子を引いて待っている。 「いやいや、ホント!俺金持ってないんすよ!」 「お金ですか?当店はお代は頂いておりません。」 「へ?」 金はいらないって言うのか? なんだ。タダでなんかくれるって言うなら貰っとくか。 「えー、じゃあ、遠慮なく。」 俺は図々しくも椅子に座った。 「それでは少々お待ち下さい。」 「はぁーい」 そう軽く返事をしたけれど待てよ? ここって一体なんの店なんだ?
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