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俺は全身の力が抜け、膝から崩れ落ちた。
すると老紳士は言葉を続けた。
「確かに貴方は変わらず、お金はここにはありません。しかし、もう一つの大事なモノは持って帰って来たのではありませんか?」
「大事なモノ?」
「ええ。友を想う心です。一度過去に戻った事で絶交した筈の友人に会い、友人の想いに報いたいと思った事でしょう。ならば、まだ諦めるには早いのではありませんか?」
友を想う心か•••そうだ。そうだよ!俺はもう一度あいつと友達に戻れるのなら、なんだってするよ!
「じいさん。俺、気付いたよ。あいつと友達に戻る為頑張ってみる。」
老紳士は微笑み、
「そうですか。」
と一言だけ残した。
俺は次の日からバイトを始め、必死に働いた。
たまに心が折れそうになったが、必死にあの店での不思議な出来事を思い出して踏ん張った。
また過去に戻って励みにしようと思ったが、あれから”かこや”を探しても見つける事は出来なかった。
けれども俺は挫けない。
俺に必要なモノは過去ではなく未来にあるのだから。
いつか借金を返し、必ず友の元へ向かおう。
十万と酒でも持って•••。
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