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特に行く当てもなく、暗い夜道を彷徨う。
どれくらい歩いたのだろうか。
段々と足が痛くなって来た。
時間を確認するともう時計の長針は真上を指していた。
どこかで救急車のサイレンが鳴り響く。
「こんな時間まで仕事なんて•••父と同じだ。」
どんよりと曇った気持ちを晴らしてくれるのはいつも仲間だった。
真子に電話しよう。
「•••あ、もしもし?真子?私家出しちゃってさぁ。今日泊めてくれない?」
「えー、家は今日無理だよぉ!じゃあ、私がそっち行くから適当に時間潰してて!」
「来てくれるのー!オッケー!待ってる!」
そう言って電話を切ったが、この深夜では学生が時間を潰せる場所なんて無い。
そんな時、細い路地裏の道で明かりが揺れたのが見えた。
あんなとこにまだやってるお店あるんだ。
なんのお店だろう。
店の前まで行くと淡い光に包まれて、吸い込まれるように入店した。
「いらっしゃいませ。」
「あ、どうも。」
「それではこちらにどうぞ。」
「ちょっと待っておじいさん!ここってなんのお店なの!?」
淡々と進む展開に思わず疑問を口に出す。
「当店は”かこや”で御座います。」
深々と丁寧にお辞儀をする老人。
「ふーん。まぁいいや。ちょっと時間潰させて!」
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