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大学4年の夏休みを過ぎ、なんとか就職が決まった。
第1希望の企業ではないけれど希望職種ではあったので、両親がとにかく喜んでくれた。
夏休みという事もあって、部活の顧問で忙しくしているのではと思いメッセージだけしておいた。
そんな時、高校で仲の良かったクラスメイトが携帯に電話をかけてきた。
『就職おめでとう!ねぇ、元気だった?』
「元気だよ。どうしたの?」
『沙希の好きだった北川先生って覚えてる?
先生、結婚するんだってさ。
だから、お金をみんなで出してお祝いをしたいのよ。どうかな?』
私は絶句し適当に返事をした。
私は『好きだった』の過去形じゃない。
現在形なのに。
あんなに好きな気持ちを伝えていたのに、受けとめてくれなかったんだ。
私は自分の部屋で号泣した。
それから、私は先生に連絡をするのをやめた。
新しく一歩を踏み出す時なんだと言い聞かせて。
クラスメイトだった同窓生からも、その後の連絡はなく、いつ結婚するのかも聞けなかった。
諦めない、めげないって決めたのに。
人の想いはどうする事も出来ないんだ。
この年齢になって知るなんて、私はバカだ。
でもそれくらい、先生が大好きだ。
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