293人が本棚に入れています
本棚に追加
「上の世界……つまり世界中にアンタらの仲間が散り散りになってるってわけか。……なんか、ごめんな」
「……? どうして坂島さんが謝るんです?」
オーク眼鏡の疑問に、坂島は答えられなかった。
ハイぺリオルの兵士――坂島伍長は、少なからず罪の意識を感じていたが、オーク眼鏡の問いに答えられるほどの勇気を持ってはいなかった。
押し黙ってしまう坂島から視線をそらし、オーク眼鏡は「まぁ」とすこしほほ笑みながら話題を切り替えた。
「きっと、他の仲間も丁重に扱われてるはずですよ。なんたって異世界の技術に富んだ者たちですからね。それに私ら技術屋なんてのは、もともと一人で作業に没頭するのが好きな人種ですし」
「……そっか」
「えぇ。なんで坂島さんが謝ったのかはわかりませんが、何かしらの責任を感じているのでしたら私らに対してはまったく要らないものです。私たちはオピオーン様と共に戦った〝同志〟、でしょ?」
「……あぁ、サンキューな。眼鏡っち」
坂島の謝辞にオーク眼鏡はくすくすと笑う。
「その〝眼鏡っち〟っていうのは、もうやめてください。あの時は、いろいろ切羽詰まってましたから訂正は控えてましたけど、ここらで堂々と名乗って私の名前を憶えていただきます。私の名前はカク――」
「ねぇカクちゃ~ん。トールちんと知り合いなん?」
横から興味深そうにアマテラスが話しかけてきた。
そんな彼女にひとつの戦いを乗り越えた〝友情〟を持つ男たちは――、
「ああ、〝同志〟だ!」「ええ、〝同志〟です!」
と、サムズアップとともに答えた。
「そ、そっか。ど、同志ね……よくわかんね~けど」
若干引き気味のアマテラスだったが、すぐに不機嫌そうに頬をふくらませた。
「でもさ~、邪魔するの悪いんだけどさ~。昔話に華を咲かせるのはいいんだけどさ~。トールちんにはあたし様が先に用があるんだよね~」
「ばふっ! ばふっ!」
だが、同時に……犬の鳴き声が聞こえた。
最初のコメントを投稿しよう!