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第194話 予期せぬ再会
「……いやぁ、失礼しました。今後は電気量に気を付けたいと思います」
アマテラスから聞いたブレーカーを上げに行き、ふたたびアマテラスの部屋に戻ってきたオーク眼鏡は朗らかに笑った。
彼はかつて、坂島がオピオーンを起動させ戦った際に通信係として助力してくれた過去を持つ。
武器の説明から戦況把握、さらには凸凹コンビの坂島とオピオーン様の仲介からツッコミまで幅広くこなした優秀な技術者である。当然、坂島も彼をよく覚えていた。名前は知らないが。
「……しかし、まさかこんなところで〝同志〟坂島さんと出会えるとは。なんたる偶然でしょう」
「いやいやいや、それはこっちのセリフだって。つか、エル・リエのアンタがどうしてこんなとこに? あの戦いの後、どうやって?」
「あぁ……それを話すと長くなるのですが、坂島さんとオピオーン様がちょうどテュポーンとヒュドラを倒してサンクファロに戻ってきたあたりで、私と他の整備士たちも全員……捕まっちゃいましてね。『ハイぺリオル』に」
「あー……通りであれからぜんぜん通信がこないと思った。まぁ、オレ、あの後オピ様とバイバイしちゃって……それで……」
坂島の脳裏に、オピオーンの〝最期〟の姿がよぎる。
〝絶対なる敵〟とオピオーンが危険視する帝舞の手から人間たち――イルシュタットたちを守るため、帝舞を道連れにしようとした最期を。
「……」
坂島はオピオーンの最期を直接目にしてはいない。
しかし、こちらの世界に戻ってきてすぐに、あの後の顛末を帝舞に問いただしても、「オピオーンは破壊した」と伝えられた。
確かに、手負いとはいえあのオピオーンを生け捕りにできるとは思えないし、あの状況で破壊しなければ無事に帝舞が生きて帰れるわけがないと、憑依した坂島自身が誰よりも理解していた。してはいるが……、
「坂島さん?」
オーク眼鏡が突然黙り込んでしまった坂島を見上げている。
「あっ? ……あぁ悪い。ちょっと考え事。そんでアンタらは『ハイぺリオル』に捕まってヨミの国に連れてこられたのか? よく殺されなかったな」
「ええ、まぁ。確かに彼らは魔族もろともにたくさんの人々を殺傷しましたが、私たちのような異世界の文化に詳しい非戦闘員は生け捕りにしてましたから」
「……それじゃその非戦闘員は、みんなヨミの国へ連れてこられたのか?」
「さぁ……。少なくとも、私だけは何故かこの世界に連れてこられ、こうしてアマテラス様の便利屋兼発明家として厄介になってますがね。他の技術者たちは上の世界のあちこちに飛ばされたらしいです」
オーク眼鏡も自分がここにいる理由がわからなかった。
ただ彼に出来ることは、とりあえずアマテラスの居候として彼女とこの世界の役にたつことに専念しようという技術屋の本懐だけであった。
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