第195話 式神と、創造

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第195話 式神と、創造

「『式神』……?」  アマテラスの自室で中で、坂島が小首を傾げてながら言う。  あぐらをかいて座る彼の隣には、チロ助が舌を出しながら二人の顔を見比べるかのように首を動かして座っていた。 「そ。ほら、これ」  アマテラスが一枚の細長い紙きれを指に挟んでもちあげた。  その紙はさきほどアマテラスと坂島がをしていた際に使用した紙であるが……そこには精緻な筆使いで前掛けをした柴犬が描かれている。 「それ、キミが描いたやつ? まさかその紙に描かれたチロ助が具現化したってことなん? どーゆー仕組み?」 「それはね~、あたし様の力でだよ~」  ふふんとドヤ顔をさらす貧弱女神であるが、ふと坂島はメノウが言っていた言葉を思い出す。 「真の偽りは肯定し、しかし虚偽は許さない……だったっけ? メノウちゃんが言ってたけど、もしかしてこのこと?」 「そうそう、それ~。よく分かったね」 「虚偽は許さないってのは〝嘘ついたら死ぬ〟ってのはわかったんだけど、〝真の偽り〟ってのは……こういうことなん?」  坂島はチロ助を見ながら言う。 「そう。確かにこの子は死んでる。影法師、ドッペルゲンガー……いろんな言い方はあるだろうけど、の存在であるのは変わりない。 でも――でしょ? つまり真実。だからあたし様の力でこうして顕現できたってわけ」 「もしかしてオレがこうやって生身の身体になってんのも?」 「そのと~り~! 『電幽体』は仮初の命――つまり偽物。でも実際にこの世界にいるし、存在もしてる。これも全部あたし様の〝太陽〟のおかげってわけよ~」 「太陽?」 「そ。この世界に浮かぶ太陽こと『八咫鏡(ヤタノカガミ)』は、あたし様の力そのものってわけ~! 畏れよ人間め~」 「わぁ、すごーい」 「ふふんっ」  再びドヤ顔をさらす貧弱陰キャ女神だが、坂島は感嘆としつつも驚愕した。  この世界に浮かぶ太陽――アマテラスいわく『八咫鏡』と呼ぶものは、彼女の力だと言う。  坂島に生身を与えるばかりか、さらに絵に起こして死んだ存在を顕現するのは凄い力だと坂島は思った。  そして同時に、「あ、そういえばこの子『アマテラス』って凄い神様だったんだ」と思い出した。
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