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「トールちんは、ここに来るまでに街を見た~?」
「あぁ、見たよ。本屋とかゲーム屋とか文房具屋とかが多かったよな」
「そ~。この世界じゃ〝『式神』をつくる〟のが住人たちの間でブームになってんの。本とかゲームとかでインスピレーションを得て、んで、筆とかペンとかまぁなんでもいいけど、色んな筆記具つかって『式神』をつくるんだよ~」
「……すっげぇな。自分のラクガキが具現化するってことか」
「そだね~。でも、正確にはそれが流行じゃないんだよね。自分で『式神』をつくって、それを他の誰かの『式神』と戦わせる……『式神勝舞』。それが流行してるって言った方が正しいかな~。あ、ちなみにつくったのはあたし様ね!」
「なにそれすっげぇ面白そうじゃん! よく小学校とかで流行るアレだろ? 自分たちでオリジナルのカードゲームかなんかを作って遊ぶみたいな? むかしオレもクラスメイトとやってたわー」
「あー、それに近いかも。てかさすが上の世界だねぇ。ちっちゃい頃から〝創作〟に勤しんでるんだから。やっぱ『人間』ってすごいね~」
アマテラスはうんうんと頷く。
「で~、あたし様がつくった『式神勝舞』が流行ってるって話に戻るけど、これが強いヤツはそれだけこの世界じゃ権力を持つんだぜ~」
「はえ~、なんかカードゲームアニメみたい」
「しかもお金が手に入るだけじゃなくて、みんなからちやほやされて……だから、中には一切働かずに定期的に行われる賞金付きの〝大会〟で稼ぐプロの〝復元者〟――クリエイターもいるくらいに、この戦いに人生を懸けてるヤツもいるくらいよ~」
「……なーんか、現代の〝eスポーツ〟のゲーマーみたいだな。ってか、〝復元者〟ってなに? 絵描いて、創ってるから〝クリエイター〟なわけなんだから復元するっておかしくない?」
坂島は疑問符を浮かべる。現代では創作家・製作者を英語で〝クリエイター〟と呼称するが、復元する者ならば、〝レストアラー〟などとするべきである。
しかしアマテラスは首を横に振った。そして、彼女は真剣な面持ちで坂島を見据えた。
「おかしくないよ。だってね、キミたち『人間』がよく想像だとか創造と呼称しているものって――実際に存在していたものを復元しているだけに過ぎないんだから」
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