第246話 もう二度とは

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第246話 もう二度とは

 この日の『コロシアム』はこれまでに類を見ない一層の盛り上がりを見せていた。  それは、エロースが昨晩に国民たちにばらまいた〝神託〟による影響が大きかった。  その〝神託〟とは、要約するとこうだ。  ――「セリスの〝処女〟を散らす」。  ただこれだけだ。  ただのこれだけの内容で、『コロシアム』は下卑た欲望を剝きだした観客たちの熱気で盛り上がっていた。  セリス目当ての観客たちのなかには、女も多くいる。女性客たちのなかには男たち相手に常勝し続けるセリスに純粋に憧れる者もいる。彼女の美貌に惹かれる同性愛者もいるにはいる。だが、それはほんの一部であり、ほとんどの女性客が今日訪れた理由はもっと下衆だ。  ……男どもを誘惑するいけ好かない女が苦しみ、犯される姿を是非見てみたい。このような理由だ。  そんな男女の下卑た欲望に駆り立てられた観客で一層ごった返すのが、今日の『コロシアム』である。  そんなセリス一色の『コロシアム』が、〝剣闘士〟アラガの初デビューの日となったところから物語は始まる。    
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