§2

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 子どもの頃から単発的にモデルの仕事はしていた。初めて本格的に役者としての仕事をしたのは高校に進学した直後で、主人公の年上の男性を魅了し翻弄するミステリアスな美少年の役だった。ミニシアター系の地味な映画で出番もそれほど多くなかったのだが、中性的な容姿と繊細な表情が説得力を増したのか、その演技は高く評価された。それをきっかけに海外の映画祭の常連である映画監督に見出され、本格的に俳優としてのキャリアをスタートさせた。  学業と両立させながらのため出演作はまだそれほど多くないが、ジェンダーレスでちょっと小悪魔的な雰囲気の役ばかりだ。それだけ、デビュー作の印象が強かったのだろう。それは自分のひとつの強みだと心得ているし、事務所にもその路線を打ち出したマネジメントをしてもらっている。  もっとも、今でこそ個性として認められ、もてはやされているが、最初からそのキャラクターが好意的に受け止められたわけではなかった。今でも、役柄と実際とを混同されて色眼鏡で見られることも多い。  それでも周りの評価は気にせずに「自分らしさ」を貫いてくることができたのは、護がいてくれたからだと和泉は思う。
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