Prologue

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 どうしてそんな評価が得られるのか、正直、鏡を見てもさっぱりわからない。けれど当然ながら、そんな戸惑いを周囲に悟られるわけにはいかない。せっかく好意的に受け止めてもらっているのだから、そのイメージを崩さないようにしたいと思う。中途半端なことはしたくない。  幸い、それを演じ切るためのとっておきのおまじないが、和泉にはある。 ――和泉が誰よりも一番、キラキラしてた。  あの日ステージの上に立った自分に親友がかけてくれた一言は、今も和泉にとって大切なお守りだ。言ってくれた本人はとうに忘れているかもしれないけれど。  彼の顔を思い浮かべながら、とっておきの笑顔の練習をする。臆病で小心者の素顔を隠して、「キラキラしてる」と言ってもらえそうな顔を、何度も何度も時間をかけて作り上げる。  ようやく納得のいく表情ができると、鏡の中のその笑顔に向けて、ひとつ願い事をする。 ――今日も一日、あいつの前で輝いていられますように。  そうやって、嘘つきでずるくて、本当はちっともキラキラしていない自分にささやかな魔法をかけるのだ。
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