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 白いカットソーの上から羽織ったグレーのロングカーディガンにブラックデニム、足元は黒のスニーカーという、相変わらず木炭デッサンのようなモノトーンスタイルだ。顔もお世辞にも派手な造形とは言い難い。人ごみでちょっと目を離したら最後、あっという間に見失ってしまいそうな外見だ。華やかさが服を着て歩いているみたいな和泉とはことごとく対照的だ。  だが、伊達眼鏡の奥の和泉の目には、そんな親友の姿がどこの誰よりもキラキラと輝いて見えてしまう。  真っ黒い短髪の下の広い額や、すっと通った鼻筋や切れ長の目。ナイフでそぎ落としたようにシャープな頬のライン。甘さはないが深みのある端整さを備えた顔立ちだ。他にも、尖った喉仏とか、かちっと四角い肩のラインとか、節の高い指とか、ディテールがいちいち男っぽい。 「こんな男前と週末二日とも顔を合わせられなかった俺の身にもなってよ」  頬杖をついて、大げさなくらいにうっとりとした声で言う。だが護はカスクートサンドの袋を開けながら、すげなく首を振った。 「それ、月曜から完全にアウトなやつな」 「えー。どこらへんがアウトなのか、ひとつ詳しい解説を聞かせてもらおうじゃないか」
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