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「『聞かせてもらおうじゃないか』じゃねえだろ。あのな、お前みたいな『光の国から来ました』みたいな正真正銘のイケメンにそういういじられ方をしてみろ。普通の奴ならとっくにキレてるぞ」
護の声は、低くて抑制が効いていて、こんなくだらないやりとりにも不思議と浮ついた感じがない。
「うんうん。護は見た目もカッコいいけど、中身も懐が深くて最高にいい男だもんな」
軽口を装った会話の中に、和泉はこれ以上ないくらいの本心を忍ばせる。一方、護はすっかり呆れ顔だ。
「いい加減にしろ、和泉」
「だって本当のことだもん。護は俺の救世主だよ。先週もミクロ経済論のノート取っておいてくれたし」
「休んだときのノートくらい、そんなお世辞使わなくても取っておいてやる」
「ほら、やっぱりカッコいい。くそう、人のハートを鷲掴みにしやがって」
心臓の上に両手を当てて前屈みになると、その頭を大きな手でぱしん、とはたかれる。
「あいて」
「あ、今通りがかった女子、『あの和泉君の頭を叩くなんて何様のつもり』って顔で睨んでった」
「ふふふ。俺の内緒の彼氏の鈴木護様だよね」
本当にそうだったらいいのに。
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