§1

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「『聞かせてもらおうじゃないか』じゃねえだろ。あのな、お前みたいな『光の国から来ました』みたいな正真正銘のイケメンにそういういじられ方をしてみろ。普通の奴ならとっくにキレてるぞ」  護の声は、低くて抑制が効いていて、こんなくだらないやりとりにも不思議と浮ついた感じがない。 「うんうん。護は見た目もカッコいいけど、中身も懐が深くて最高にいい男だもんな」  軽口を装った会話の中に、和泉はこれ以上ないくらいの本心を忍ばせる。一方、護はすっかり呆れ顔だ。 「いい加減にしろ、和泉」 「だって本当のことだもん。護は俺の救世主だよ。先週もミクロ経済論のノート取っておいてくれたし」 「休んだときのノートくらい、そんなお世辞使わなくても取っておいてやる」 「ほら、やっぱりカッコいい。くそう、人のハートを鷲掴みにしやがって」  心臓の上に両手を当てて前屈みになると、その頭を大きな手でぱしん、とはたかれる。 「あいて」 「あ、今通りがかった女子、『あの和泉君の頭を叩くなんて何様のつもり』って顔で睨んでった」 「ふふふ。俺の内緒の彼氏の鈴木護様だよね」  本当にそうだったらいいのに。
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