Prologue

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Prologue

 本当は、自分の顔なんて全然好きじゃない。  それなのに、こうして毎朝鏡を覗き込む習慣はどうしてもやめられない。  今朝も鈴木和泉(いずみ)は、鏡で注意深く自分の姿を確認する。  耳の上にかかる、少しくすんだ色味のアッシュブラウンの髪。光の当たり具合によって琥珀色にも見える瞳。その瞳にカラーコンタクトを入れようとするときにいつも邪魔になる、長い睫毛。目の形そのものはくりっと丸いのに、目尻だけがきゅっと切れ上がっていて、ミステリアスな印象だとよく言われる。色白の滑らかな肌にはほくろひとつなく、髭もほとんど生えない。  父親がイギリス人で母親が日本人のハイブリッドの顔立ちは、どちらの文化圏でもどことなく異国風の印象を与えるようだ。モデルをしていた頃も、そして役者としてデビューしてからも、「エキゾチック」というキーワードが看板のようについて回る。それだけでなく、最近は某雑誌で「クリスタル系男子」などという特集で取り上げられたりもした。「様々な表情を見せるのに、それがどれもキラキラ輝いていて、しかも透明感がある」という意味なんだとか。
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