ベストマンの意外な告白

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「クリスが神学校に進んで、神様に仕えることになったときも相当たまげたけどな、お前が、俺たちの中で一番先に結婚する。それだけじゃない。まさか、あのローズが相手とはな」 「なんだよ悪いかよ。彼女以外にいい女なんて、他にいるか?それに、彼女は見る目があるってことだろ」 みんなは呆れたような顔で笑う。 「まあ、最初の質問には同意してもいいかな、って感じだけどさ」 「おい!なんだよその態度は?!」 息巻く新郎・ネイトを制して、ギャレットは真面目な顔で彼を見つめる。 「彼女を幸せにしろよ。俺たちが常に監視してるからな」 「言われなくても幸せにするさ。それより、お前『たち』じゃなくて、お前が、じゃないのか?」 ギャレットはふん、と鼻を鳴らすと、そっぽを向いた。 「おい……」 ネイトが言葉を続けようとしたそのとき、新たな客が入ってきた。 皆が拍手で迎える。 「おお、牧師様!こっちこっち!」 白い清潔なシャツに、黒いスラックス姿のクリスが、テーブルに近づいてきて、腰を下ろした。 「酒をくれ」 開口一番、シャツの襟もとから牧師のカラーを外しながら言う。 タナーが、阿吽の呼吸で飲みさしのボトルをクリスに差し出す。 クリスはタナーにちらりと目をやると、ボトルを受け取り一気にあおった。 「おいおい、明日のために、あんまり飲みすぎるなよ」 新郎が心配そうに眺めながら、明日の式を取り仕切る牧師に注意する。 「お前からそれを言われる立場になるとはね。おめでとう、ネイサン・ガードナー。とうとうだな」 ネイトは、クリスとボトルを合わせ、乾杯する。仲間たちがその後に続く。 「牧師様が見ていらっしゃると思うと、ハメを外せないな」 「何言ってるんだか。お前の悪行は小さなころからさんざん見てるから、今さらだよ。ただ……」 真面目な顔つきになり、ネイトに指を突き立てる。説教する時の顔だ。 「女関係はクリーンにするんだぞ」 ギャレットが横から口を挟む。 「お前……!」 椅子から立ち上がろうとするネイトを抑えて、タナーが言う。 「まあまあ、牧師様もそう言おうとしてたんだろう?」 クリスはボトルをタナーに向かって掲げた。 「ご名答。アーメン」 「なんだよみんなして。俺は相当信用がないんだな」 「これまでがこれまでだからな。行動で見せていくしかない」 「ああ。分かってる」 ネイトの瞳は決意と希望に満ち満ちている。これが改心した男の顔というものか。
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