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殴り合っていた男たちがようやく二人に気付き、動きを止める。
あまりの出来事に、ある者は口をあんぐり開け、ある者は頭に両手をやっている。
そして最後まで掴みあっていた新郎と、新婦の元恋人も、ついに憎み合う相手から、カラオケマシーンの前で抱き合う二人へと視線を移した。
「何てこった」
クリスとタナーは、悪友たちから驚愕の眼差しを向けられているのに気づいて、はにかむような笑みを浮かべた。
タナーがクリスに囁く。
「俺の家?それともお前の?」
「そうだな。ここから近いのは俺の家かな」
「よし、決まりだ」
タナーはクリスの手を握り、足早にドアへと向かう。
「お前ら、飲み過ぎて明日遅れるなよ。あ、そこのカラー取って」
思考停止に陥った仲間の一人が、言われるがままにテーブルに置きっぱなしだったクリスの商売道具を取ってタナーに投げる。
「サンキュー。じゃ、明日!」
バタン、とドアが閉まる。
フロアには、歌い手を失ったラブソングが流れていた。
と、再びドアが開く。
今度はクリスが顔だけ出す。
「そうだ、ネイト」
「へ?」
「顔の腫れには、生肉がいいぞ。ステーキが冷蔵庫にあったら、それを当てるんだ」
「……オーケイ」
クリスは呆気にとられる一同に向かってウインクし、再びドアが閉まった。
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