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 ある国に、聖女がいた。  その人物は、人と人は分かり合えると、そう信じて疑わない聖女だった。  彼女は純粋だった。  だから、聖女になれたのかもしれない。  しかし、それが皮肉な結果を生むことになる。  二つの争い合う種族を仲裁するために、聖女はとある場所に赴いた。  争いをやめるよう、説得するためだ。  しかし、聖女の言葉は聞き入れられない。  やがて、聖女は争いにまきこまれて、命を落とした。  しかし、生前の行いが評価されて、女神となった。  そのかつて聖女だった女神は、死してなお、二つの種族に言葉をつくして、争いをやめさせようと手をつくした。  人と人は分かり合えると、信じて。  しかし、二つの種族は互いを滅ぼすまで戦いをやめなかった。  聖女は分からなかった。  どうして、分かり合えるはずの者達が、そこまで至らなかったのか。  二つの種族は、相手の力を奪う事でしか生きられない。  二つの種族は、互いの言葉を理解する事ができない。  けれど、それでも、聖女は分かり合えると信じていたからだ。
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