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 その男は凄腕の剣士だ。  剣の扱いで、右に出る者はいない。  だから、図にのっていた。  他の剣士に指図をして、困らせていた。  困ってはいるが、他の者達は逆らえない。  なくなく、金をあげたり、食い物を差し出したりしていた。  しかし、剣士は満たされない。  それは、他の剣士も同じだった。  その世界の剣士たちは、みな職に困っていた。  数年前は、戦で仕事がたくさんあったが、今は平和になっていたからだ。  だから、その剣士はいった。  戦がないなら、起こせばいい。  指図された剣士たちは、仕方なく戦をおこすことにした。  村や町を襲って、略奪。  近くの国がいがみ合うように、互いの国の仕業だと偽装した。  最初は仕方なくだったが、剣士たちは徐々に自ら騒動を起こすようになった。  彼等の目論見は成功して、戦は起こった。  剣士は大喜びした。  剣を持って、活躍した剣士は、やがて一つの国の英雄となる。  そして、もう一つの国は滅んだ。  戦に勝った国の人々は、その英雄の過去を知らない。
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