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「お、おお、会計か…どうした」
「……いや、…」
「…?」
エレベーターの扉をこじ開けた会計は酷く焦っている様子だった。
肩で息をしているから多分走ってきたんだろう。
忘れ物か?俺に届けに...いや、俺は何も持っていってない。唯一持っていったスマホはポケットの中にきちんと鎮座している。
そもそも、忘れ物だとしてもこんなに必死にはならないだろう。明日渡せばいいってなるだろうし。
「どうしたんだよ?」
「…もーう☆急に帰っちゃうなんて、俺ビックリしちゃったー☆」
いつもの様子で喋る会計。だがそれは取り繕っているようにしか見えない。
でも、こういう時人になんて言ったらいいのか分からんし、スルーしておこう。
「……いや、置き手紙あったろ」
「え?」
まさかの気づかれてなかったわ。
「そんだけ必死になって俺に何か用かよ?」
「……し…?」
「ん?」
今なんてった?
「いんやぁ?何でもないよ☆それより、俺の事そんなに心配してくれてるの?あ!もしかして俺の事好きn「じゃあな俺もう帰るから」もー冗談だってー」
そう言って会計が手を離すと、直ぐに扉はまた閉まっていく。
扉の閉まる一瞬、向こうにいる会計の顔が影を落としていたのが見えた。
見てしまった。
俺にあいつを元気づけたりどうこうしたりする義理はないんだが......。
多分、面倒くさいことになるやつだと思うし。
……こういうのは
「モサ男の仕事、だよな。頑張れヒロイン♂」
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