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走ること数分、路地を真っ直ぐ抜けると原っぱがある。そこに着くと少年は叫んだ。
「モモー!」
その声に振り返ったのは頬にガーゼ、鼻に絆創膏を貼った、年齢の割には華奢な青年である。
「おーう!輝ー!」
1ヶ月ほど前、少年が散歩をしていると、この原っぱに出た。そこに偶然いたのがモモと呼ばれた青年である。
最初は互いに遠慮しあっていたが、直ぐに打ち解け、それ以来は毎日ここに来ているのだ。
「今日は輝に食わせたいものがあってな…。」
そう言って持っていたビニール袋に手を入れる。
赤い色をした袋を手に取り、少年に見せるように出す。
「あ!これ!」
「輝、前に食ってみたいって言ってただろ?内緒で食おうぜ!」
その袋には帽子を被り、歪な楕円形の形をした黄色いキャラクターが指を立てて写っていた。
芋を薄く切り、油で揚げて塩をまぶしたスナック菓子だ。
少年は今よりも小さい頃から親に厳しく育てられ、このような体に悪影響を及ぼすと思われる物は口にしないように教えられていたのである。
「でも、いいのかな…。」
「なーに言ってんだよ!1、2枚食ったところで死にゃしねぇって!」
袋を空け、青年は1枚とって食べてみせる。
次はお前だと言うように袋を少年に向ける。
少年はおずおずと手を出し、袋から小さいものを1枚だけ取って口に運ぶ。
「!!」
途端に目を輝かせる少年を見て、青年は満足そうにまた口に運ぶ。
「どうだよ、美味いだろ?」
「うん!美味しい!」
今まで少年が食べてきたお菓子というのは紅茶用のクッキーだったり、脳を働かすためのチョコだったりといった最低限のものだった。
だが学校に通っている以上、必然的に様々な男児と関わることになる。
それは少年がクラスメイトと話していないにしても、男児たちが会話をしている内容が耳に入ってくることも仕方の無いことだ。
『なあ、お前ってポテチ何味が好き?』
『やっぱコンソメかな~』
『まじ?のり塩が1番じゃね?』
『のり塩よりかはうすしおが好きだわw』
最初はポテチとは何か分からないという状態だったが、クラスメイトの会話が聞こえるおかげで色々わかるようになった。
その内そのお菓子に興味を引かれ、その事を青年に話したのである。
「モモ、ありがとう!わざわざ俺のために。」
「気にすんなって。俺もちょうど食いたかったしな。」
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