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「…え?」
「今回の怪我もそうだが、…授業に集中出来ていなかった原因もあの子なんだろう?」
「そ、そんな……俺…でも、俺………」
何かを話そうとしても、少年の口は言葉を紡がなかった。
まだ幼い頭では、父親の言うことに反論できなかったのだ。実際、全て正しいし、何か言ってもすぐに正論を返されてしまうと思ったのだろう。
「…………はい……」
少年は頷いて、それを見た父親はもう寝なさいと言って少年に布団をかぶせた。
「……………」
次の日、少年は軽い授業を受けた後、いつもの原っぱにいた。
父上には、もうモモとは会わないと言ったけど、どうしても最後に顔が見たい。
そんな思いからだった。
少年は少し罪悪感がありつつも、いつもの原っぱに寝転がっていた。
そろそろ日が真上になる。
戻ろうと後ろを向くと、誰かに名前を呼ばれた。
「ひかる」
この声、間違うはずない。
いつも色んな話を聞かせてくれる、
いつも笑わせてくれる、
いつも名前を呼んでくれる、
そんなことをしてくれる声は、この世界に1つだけ。
少年は振り返る。
「モモ……!」
そこには、いつもの比にならないくらいの傷を作った青年が立っていた。
「…っ、モ」
「なんでもっと早く来なかったんだ。」
「………え?」
青年の声には怒りが混じり、少年を見る目には嫌な光がさしていた。
こんな青年を見るのは始めてで、少年は言葉に詰まる。
「俺、知ってからな。お前が俺が殴られるのを見てるの。」
「………え」
「あのときに大人を呼べば俺はこんなにならないで済んだんだ!!」
「あっ……」
「何とか言えよ!」
どうしたらいい、どうしたらモモの怒りをおさめられる?
少年にはごめんの3文字しか頭に過ぎらなかった。そんな少年を見抜いたのか、青年はため息をついた。
「もういいよ。」
「え…?」
「お前、最低だよ。」
「っ………」
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