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「覚えているも何も、……あの学園の生徒会長でしょう。」
「そういうことではない。質問を変えるか。小学生だった時のことを覚えているか?」
一瞬、モモの目元がピクっと動いた気がした。
だがすぐに笑って、こう言ってきた。
「そんな昔のこと覚えてませんよ~。俺もう二十歳超えてるんっすよ?そこまで記憶してませんって。」
「…………」
俺はモモが嘘をついてることがわかった。
モモは昔から、嘘をつくとき右手を首の後ろへ回す。
昔から変わっていない。
こんなことを覚えていた自分も相当だがな。
俺は苦笑気味に笑ったあと、モモの目を見て言葉を放つ。
「あんなことを言って悪かった。モモ」
見るからにモモは動揺している。
「あんなこと…て、何ですかね。俺と会長様が話すのはこれが初めてだと思うんですが…。」
下を向いて言う。
いつもは目を見て話すのに…。
ああ、こんなことまで覚えているのか、俺は。
「モモが覚えていても、覚えていなくても、俺はどちらでもいい。ただ、あのときのことを謝りたいだけだ。」
あのとき。
「大人を呼ぶのが遅くなって悪かった。」
そう言うと、モモは頭を上げて驚いたようにこちらを見た。
「許して貰えるなら、また俺に、色んなことを教えて欲しい。」
モモは覚えている。そう確信しているから、モモを真っ直ぐに見れた。
大きく開かれていたモモの目からは涙が1粒、また1粒と流れてくる。
「いや……俺、悪かった……。」
涙は相変わらず流れてたけど、その表情はどこかスッキリしていた。
side end
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