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「お嬢、妖魔退治できるのか」
妖怪カラカサが私を背負って走りだした。父上に忠誠をつくす彼は、私のこともお嬢として大事にしてくれるから、妖怪の中では話しやすい。
「さあ」
「さあって。ま、オレの岩をも砕く蹴りの見せどころだな」
普段は一本足の和傘の妖怪。今は二足歩行のヒトに変化していて、パーカーのフードを深くかぶった男性。風のごとく速い足は蹴りも強い。
「うん、よろしく。私は明日の決断のために職場体験したいだけだから」
「は? オヤジさんの仕事バカにするなよ。この東京を守るすげえことしてるんだぞ」
「それはわかってる」
そんなこと、十分わかっている。妖怪とともに妖魔と戦うかっこいい父上を子どものころからよく見てきた。
「そうかよ。せいぜいオヤジさんに泥をぬるようなまねするなよ。職場体験だろうが仕事は仕事だ」
カラカサはぐいんとスピードをあげて進みだした。
現実が近づく。妖魔と戦うという現実が。
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