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妖魔の泣き声にまじって空から重低音が聞こえてきた。仰ぐと、赤いランプを点滅する物体が飛んでる。報道のヘリコプターだろうか。こんだけ強い妖気を発して暴れていたら一般人にも認識できるのだろう。
ヘリは東京タワー上空でホバリング体勢にはいった。
まばゆい光が照射された。
「わ。ニャンコさんだ!」
緋い鉄塔とともに映しだされたのは巨大な白猫。こんなに大きいのは見たことない。
……ああ。あのもふもふに体をうずめたい。
「カラカサ、私をあのニャンコさんに連れてって」
「戦うのか? どうやるんだ。お嬢命名のカラカサキックで」
ううん、と私は戦闘体勢のカラカサを制して、半笑いになった。
わき上がる欲を止められない。これがバカバカしいことはわかっている。だから、笑うしかない。
「へへ。あの上で寝たいの」
と、指さした先で、白猫がヘリをはたき落とした。蛾をつかまえたギンタのように軽々と。
ヘリは瓦礫の山に消え、跳ねた白猫は地面にふわりと着地した。
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