出現

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「……あれに、寝たいのか?」 「うーん。とりあえずカラカサキック?」  猫に暴力をふるいたくないけど、これ以上被害をださないためにはしかたないか。 「あいよ」  カラカサは私をおろした。  次の瞬間、仄暗(ほのくら)い中で視覚がとらえたのは、白猫の高速ネコパンチ。カラカサは避けたり蹴ったりしてるのか速すぎて認識できない。  そんな白熱するバトルのなか、白猫の後ろ足がよく見えた。後ろ足だけ静止している。 「チャンス!」  ふいうちできるかもと、後ろ足へ走りだす。  けど、なにをすればいいかわからない。私には戦うすべがない。  父上がやっていた退治の動作を思いだしながら、手刀を右手につくる。   「とぉっ」  なにも発動せず、足をチョップした手が痛んだ。父上の手は刀となり妖魔を切り刻むことが可能なのに。  と、じんじんする手をかかえて落ちこんでいるひまはない。白猫の褐色の瞳が私をとらえてぶきみに光った。  ネコパンチが来る。ジェット機のごとき勢いで。  手刀を迫る肉球に向け、心安らかに目を閉じる。もしダメだったとしても、世界最大級の肉球に当たってやられるなら悪くないかも。
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