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「あっ…幸人」
「実莉見つけた!今終わった?」
「うん、帰ろうとしたとこ」
私達の元に走ってきたこの爽やかな男の人は、長井幸人
…私の彼氏だ。
「じゃあ一緒に帰ろ!」
「あ、でも今有咲と…」
「有咲、実莉もらっていいだろ?」
「はいはい!お譲りしますよ〜彼氏君には敵いませんからね」
「え!?ちょ、ちょっと有咲!」
「いいからいいから!どうせこの後は美容院向かわなきゃだったし」
幸人は有咲と同じグラフィックデザイン科で、サッカーサークルで活躍している。
有咲と幸人が元々友達だったらしく、春の催しで2人に声をかけられてから私達は仲良くなった。
それから徐々に知り合って、幸人と付き合うことになったんだ。今は付き合って半年ぐらい。
「じゃ、実莉のことよろしくね!ばいばーい!」
「おう!またな!」
「有咲、ありがとう…また明日ね!」
小さくなる有咲の背中を見送って手を振った。
彼氏が出来たのは幸人が初めてで、慣れないことばかり。学校で幸人と会うのも少し気まずく感じてしまう。
「じゃあ実莉、帰ろ!」
「うん…行こっか…!?」
ふわっと繋がれた左手。あまりに自然すぎて一瞬触れたことも分からなかった。
「ちょ、校内なのに…!」
「いいじゃん別にー俺達付き合ってるんだし」
「…そ、そっか、そうだよね」
「実莉はそういう慣れてない所も可愛いな」
「……っ」
幸人は、いわゆる陽キャと呼ばれる人種。私は当たり前に陰の方で。周りにも、そこ2人が付き合ってるの!?って驚かれるぐらい真逆な存在。
運動ができて、爽やかで、明るくアクティブな幸人は男女問わず人気者だ。
なんでそんな人が私と付き合ってるのか…なんで告白してくれたのか、分からない部分はたまにある。
でも、人生初の告白に人生初の彼氏に…舞い上がってしまったんだと思う。
幸人は優しいし、そのままの私が好きだって言ってくれる。きっともうこんな人いないよね…。
「なぁ、今から家来ない?」
「えっ…」
「今日、バイトないだろ?家誰もいないし来いよ。帰り送るから」
「…あ、うん。じゃあ行こうかな」
そう、私は勝手に舞い上がってしまったのだ。
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