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確かに聞こえた。
幸人は…今、有咲って言った。
どういうこと…?
電話の相手は有咲だったの…?
それに、抱きたいって…
幸人が電話を終えた音がして、私は慌てて部屋へ戻った。
心臓は激しく鳴りっぱなしだし、冷や汗もすごい。さっきの会話が耳から離れない…。
「ごめん、遅くなって。急に腹痛くなってさー。まじで大変だった」
「…そ、そっか。大丈夫?」
「うん、もう大丈夫ー」
私の隣に来て、ドカッと座り込む幸人。そのままくっついて私の肩に腕を回す。
「さっきは、本当にごめんね?怖かったよな…もう無理やりしないから」
「う、うん…」
「実莉、好きだよ」
私、ちゃんと平常心で話せてる?不自然じゃないかな?
「…あ、ありがとう」
さっき、トイレの前まで行って会話が聞こえたの。有咲と浮気してるの…?本当は私のこと好きじゃないの?
そう聞きたいのに、聞けないのはきっと私が弱いから。ぎゅっと手を握りしめて、零れそうな涙を抑える。
幸人に振られたら、もう私を貰ってくれる人なんていないって思うから…。
だから、見て見ぬふりをしてしまうんだろう。
本当に私は…ダメだ。
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