1. 偶然の出会い

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確かに聞こえた。 幸人は…今、有咲って言った。 どういうこと…? 電話の相手は有咲だったの…? それに、抱きたいって… 幸人が電話を終えた音がして、私は慌てて部屋へ戻った。 心臓は激しく鳴りっぱなしだし、冷や汗もすごい。さっきの会話が耳から離れない…。 「ごめん、遅くなって。急に腹痛くなってさー。まじで大変だった」 「…そ、そっか。大丈夫?」 「うん、もう大丈夫ー」 私の隣に来て、ドカッと座り込む幸人。そのままくっついて私の肩に腕を回す。 「さっきは、本当にごめんね?怖かったよな…もう無理やりしないから」 「う、うん…」 「実莉、好きだよ」 私、ちゃんと平常心で話せてる?不自然じゃないかな? 「…あ、ありがとう」 さっき、トイレの前まで行って会話が聞こえたの。有咲と浮気してるの…?本当は私のこと好きじゃないの? そう聞きたいのに、聞けないのはきっと私が弱いから。ぎゅっと手を握りしめて、零れそうな涙を抑える。 幸人に振られたら、もう私を貰ってくれる人なんていないって思うから…。 だから、見て見ぬふりをしてしまうんだろう。 本当に私は…ダメだ。
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