大転落~丸の内から第三世界へ

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この悩みは最近いよいよ切実になってきた。 これまで大学だ就職だと騒いでいた親や友人たちが、二十代半ばからにわかに結婚へとシフトチェンジしたのだ。 『結局、女の格付って結婚でしょ?』 これは先日セレブ男性を捕まえて結婚した〝勝ち組〟の発言だ。 私ときたら結婚はおろか恋愛経験ゼロ。恥ずかしくて内緒にしているけれど、たぶん友人たちは勘づいていると思う。これまでの学歴とキャリアレースでは私がトップだっただけに、意地悪な友人たちはマウンティングの標的にしてやろうと手ぐすねを引いている。 そんな訳で、先日は友人たちの追及をかわそうとしてつい「菱沼で社内恋愛中」と大嘘をついてしまった。 「はぁ……」  自分のプライドの高さが嫌になる。溜息をつき、人事部に向かってとぼとぼと歩き始めた。 あの嘘、どうやって回収しよう? これから菱沼で恋が生まれるなんて都合のいい展開はあり得ない。だって六年も過ごしてきたのに、社内の男性は誰一人として私に見向きもしなかったんだもの。 菱沼の男性はエリート揃いなので女性には不自由しておらず、目が肥えている。頭でっかちの物干竿などお呼びではないのだ。そもそもほとんどが売約済で、独身男性自体ほとんどいない。 唯一、社内中の女子が狙う一番人気の独身男性が残ってはいるけれど──。 (あれは……関係ないわ) パンドラの箱の隙間から嫌な記憶が続々と湧いて出てきたので、急いでしっかりと蓋を締め直した。
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