大転落~丸の内から第三世界へ

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涼やかな切れ長の目、高く通った鼻梁、薄く理知的な唇。 百九十センチ近くあろうかという体躯はすっきりと引き締まり、幅のある肩、恐ろしく長い脚とすべての理想形を備えている。 わが社のクール系美男子といえば誰もが筆頭にその名を挙げるだろう。 菱沼ホールディングス人事本部人材開発課課長、北条怜二。 名前まで寒々し……、いやクール系だ。 でも私は名前を聞くだけで背筋がぞわぞわするほどこの男が苦手だったりする。 北条怜二はその美麗なルックスとは裏腹に「ヘビ男」という異名をとるリストラ執行人だ。にも拘わらず彼は大層おモテになるが、よほど理想が高いとみえて、言い寄ってくる女はどんな美人でも片っ端からバッサリ断ることで有名だ。 でもそれらは私が彼を嫌っている理由にあまり関係ない。私は他の女子のようにこの男と個人的にお近づきになりたいなんて露ほども思っていないのだから。 私が北条怜二を避けまくっているのは、彼が私の黒歴史の生き証人だからだ。ちなみに彼は一度目にした人事データは絶対に忘れないという執念深い記憶力の持ち主らしい。 その黒歴史はかなり昔に遡る。
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