二度あることは三度ある?

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「私は見世物ですか? これは何のためですか? 私にはわかりません。肩叩きならはっきり言ってください」 言い終えた時、しんと音がするぐらい辺りは静まり返っていた。彼の顔を睨むように見つめる。 でも私はすでに激しく後悔していた。〝肩叩き〟という言葉を口にしてしまったことを。それはここで働く人たちへの侮辱だ。たとえ誰も聞いていなくても絶対に言ってはいけなかったのに。でも客観的に見てこの状態はそうとしか言いようがない。 とてつもなく長く思えた静寂のあと、北条怜二が静かに口を開いた。 「これを肩叩きだとあなたが思うなら、仕方ありません」 ガツンと頭を殴られたように目の前が揺れる。 こんなことを言ってしまったのだから切られても仕方がないし、覚悟もしていた。でも彼の言葉ははっきりと明言されるよりも残酷に聞こえた。 〝もし辞めたいって言ったら、彼は私を引き留めてくれるかな〟 引き留めないだろう。宣告する手間さえ省く人だもの。 奥歯をきつく噛みしめていないと涙腺が緩んでしまいそうだ。
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