1.この世界の皆さん、なんでこんなに昭和のヤンキーなの!?

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 第三都市・魔梨亜樹(マリアージュ)は、烈怒亡霊(レッドゴースト)獄黒鳥(ブラックバード)、そしてナオ率いる(ヴァルハラ)(ソード)が覇権を争っていた。  ミドリとナオが出会った日は、その三つの抗争の日だった。 「用意はいいですか、ナオ総長」  嫌みたらしく丁寧な口調で、獄黒鳥(ブラックバード)の会長・タカユキがナオに確認する。 「ああ、いいぜ!」 「それでは、烈怒亡霊(レッドゴースト)のほうも大丈夫ですか。ノブナリナンバー1」 「用意は出来てるが、気持ち悪ぃ呼び方すんな!」 「おやおや、私としては丁寧にお呼びしているつもりだったのですが」  抗争といっても、彼ら同士が戦うのではない。    戯瑠弩(ギルド)が困っている難易度の高い依頼を受け、それを一番先に成功させたものが勝ちというものだ。  彼らはぐれ者の抗争が許されているのは、その争いが都市の利益になるからである。  今回は(ヴァルハラ)(ソード)烈怒亡霊(レッドゴースト)獄黒鳥(ブラックバード)の中から10人を選抜し、リザードマン1体を倒すという依頼だった。  死者が多く出ると戯瑠弩(ギルド)に怒られるため、1体に10人で当たるという安全設定である。  むしろ速さが競われる抗争だった。  そのため、出発時間が同時になるよう、厳密に守られることになり、獄黒鳥の会長・タカユキが号令をかけることになっていた。 「テメェは戦わねぇのかよ」  ノブナリの問いにタカユキはふふっと笑った。 「私は頭脳派ですので。そのあたりは副会長のマサヒロくんに任せてます」 「ケッ、相変わらずうさんくせえ奴だな!」    悪態をつかれても微笑を崩さず、タカユキは準備を始めた。 「それでは、全員同時に出発しますよ。3、2、1……0!」  タカユキの号令で、全員が一気に走り出す。  彼らは(ノワール)(フォレ)に入り、パワー系の烈怒亡霊、インテリ系の獄黒鳥を追い越し、スピード系の天の剣がリードした。  だが、その速さが災いした。  1体だと思っていた、彼らならず者集団(チーム)にとっては“狩り”だと言えるようなリザードマン討伐だったが、そこに50体を越すリザードマンが現れたのだ。  気づいた時には囲まれていた。 「ど、どうする、ナオくん!」  一番乗りだと勢いづいていた天の剣の面々の顔に焦りの色を浮ぶ。  ナオが考えていると、三番隊隊長であるユキトがあることを思いついた。 「そうだ! 烈怒亡霊や獄黒鳥の奴らは?」  30人いれば切り抜けられるかもしれないとユキトは希望を持ったが、一番隊隊長であるユウゾウは首を振った。 「無理だな。後ろに付いてきていた烈怒亡霊は俺たちが囲まれてるのを見て、早々に逃げ出した」 「なんだよ、アイツら! 普段は烈怒亡霊がパワー最強とか吹いてやがるくせに!」  悪態をつく元気はあるものの、ひしひしと絶望感が広がる。 「ナオくん……どうしよう、このままじゃ……」 「落ち着け! 動き方を間違えなきゃ、うまく脱出できる」  ナオは強気の言葉を返し、相手の様子を伺った。 (オレ一人ならすぐにここを抜け出せるが……)  天の剣の中でもっとも足が早いのはナオである。  ナオが囲みを抜けて、街で待つ天の剣の残りのメンバーを呼ぶ方法もあった。  しかし、五代目総長たる自分が仲間を置いてこの場から走り去るなど、ナオにはできなかった。 (そんなことをしちまったら、ナオ・ディックスグレイの名を捨てなきゃいけねぇ)
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