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ナオは一歩前に進み出た。
「オレが道を作る。その間に、お前らはヨシたちのところに行け!」
街には天の剣の副総長であるヨシカズと他のメンバーたちがいる。
ヨシカズたちを呼びに行けば、天の剣はかなりの数になるが……。
「でも、ナオくん!」
仮にナオが道を作ってくれて、他のメンバーが助けを呼びに行っても、その間にナオがやられてしまうかもしれない。
「相手はリザードマンだ。ただ、死ぬだけじゃ済まなかったら……」
不吉な言葉をナオは遮断した。
「オレを誰だと思ってる。天の剣五代目総長ナオだ」
ナオは自分の特攻服を脱ぎ捨て、完全戦闘態勢を取った。
「オレはどんな奴にも決して負けない。お前らがいたほうが足手まといなんだよ」
わざと遠ざけるような言い方をして、ナオは拳に魔力を貯めた。
「ほら、このオレがお前ら全員が通れる道作ってやるから、さっさと行け!」
仲間を叱咤し、ナオが地面を蹴って、リザードマンの囲みの薄い場所に突っ込もうとしたその時。
いきなり小さな光が現れ、昼にもかかわらず強い明るさを感じる光が急激に広がった。
「うっ!」
リザードマンも天の剣のメンバーもその光の眩しさに反射的に目をつぶってしまう。
光が収まり、彼らがそちらに視線を向けると、そこには剣を抱えたミドリの姿があった。
「えっ……? えっ……」
ミドリがキョロキョロし、ナオと目が合う。
落ち着かないミドリとは逆に、ナオはミドリの姿をじっと見据えていた。
「お前、その髪、その目……」
ナオが続けて何かを言おうとした時、リザードマンの一体が向かってきた。
「やべっ!」
動けないミドリを庇おうとナオが走る。
それに釣られるように、他のリザードマンも武器を手にナオに襲い掛かろうとした。
「あっ……あぶな……」
ミドリが抱えた剣を持ってふらふらと立ち上がろうとした時、剣が鞘からすっぽ抜けた。
それを慌てて拾おうとして、ミドリが剣の柄を握った時、剣から金色の光が放たれた。
「うわっ!」
よろよろしながらミドリが持ち上げようとすると、その剣先から放たれた金色の光は偶然、ナオに襲いかかろうとしたリザードマンを貫いた。
「えっ……」
何が起きたのかミドリにはわからず、わからないまま、剣をなんとかしまおうと動かすと、今度は金色の光が並んだリザードマンを薙ぎ払った。
「グギャッ!」
悲鳴を上げてリザードマンたちが倒れていく。
ナオたちも驚き、リザードマンたちも驚き、何よりミドリが驚いていた。
「あ、あ、あの……」
ミドリは何か弁解をしようとしたが、言葉が出ない。
ただ、ミドリが剣を握ったままだったので、リザードマンたちは敵意ありと判断し、集合隊形を取って、ミドリに襲い掛かろうとした。
「うわわわわわっ!」
動物をしっしっとやるように、ミドリは両手で剣を握ってぺこぺこと上下に振った。
ミドリの動きはヘロヘロなのに、剣から出る黄金の光は強かった。
黄金の光がリザードマンを貫く、薙ぎ払う、蒸発させる。
ギヤアアアアアア!!!
「ご、ごめんなさあああい……」
ミドリはリザードマンの声にビビり、尻餅をついて座り込み、目をギュッと閉じて、小声で謝った。
だが、その声は黄金の光にやられたリザードマンの断末魔で、ミドリが恐る恐る周りを見た時にはリザードマンの死体がゴロゴロと転がっていた。
「え? え……?」
「……すっげええ!!!」
困惑するミドリの声をかき消すように歓声が上がる。
「なんだ、今の光、マジすげえ!」
「あんた最強かよ!」
リザードマンが倒れたと思ったら、今度は強面の人たちに囲まれて、ミドリは顔を青くした。
「あ、あの……あの……」
「お前ら、丁寧に接しな。その人は『運命の子』だ」
囲みをかき分けて、ナオがミドリの前に立つ。
金色の髪に左右違う赤色の目をしたナオに、ミドリは一瞬、目を奪われた。
(強面の人たちをまとめてるとは思えない、アイドルみたいな綺麗な顔をした人だな……)
そのナオがすっとミドリに手を伸ばした。
「オレの名はナオ。助けてくれてありがとう。名前を聞いていいか?」
「ミ、ミドリ……です……」
震える声でミドリはそう答え、助け起こそうとしてくれているナオの手を取ったのだった。
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