1.この世界の皆さん、なんでこんなに昭和のヤンキーなの!?

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 ナオは一歩前に進み出た。 「オレが道を作る。その間に、お前らはヨシたちのところに行け!」  街には天の剣の副総長であるヨシカズと他のメンバーたちがいる。    ヨシカズたちを呼びに行けば、天の剣はかなりの数になるが……。 「でも、ナオくん!」    仮にナオが道を作ってくれて、他のメンバーが助けを呼びに行っても、その間にナオがやられてしまうかもしれない。 「相手はリザードマンだ。ただ、死ぬだけじゃ済まなかったら……」  不吉な言葉をナオは遮断した。 「オレを誰だと思ってる。天の剣五代目総長ナオだ」  ナオは自分の特攻服を脱ぎ捨て、完全戦闘態勢を取った。 「オレはどんな奴にも決して負けない。お前らがいたほうが足手まといなんだよ」  わざと遠ざけるような言い方をして、ナオは拳に魔力を貯めた。 「ほら、このオレがお前ら全員が通れる道作ってやるから、さっさと行け!」  仲間を叱咤し、ナオが地面を蹴って、リザードマンの囲みの薄い場所に突っ込もうとしたその時。  いきなり小さな光が現れ、昼にもかかわらず強い明るさを感じる光が急激に広がった。 「うっ!」  リザードマンも天の剣のメンバーもその光の眩しさに反射的に目をつぶってしまう。  光が収まり、彼らがそちらに視線を向けると、そこには剣を抱えたミドリの姿があった。 「えっ……? えっ……」  ミドリがキョロキョロし、ナオと目が合う。  落ち着かないミドリとは逆に、ナオはミドリの姿をじっと見据えていた。 「お前、その髪、その目……」  ナオが続けて何かを言おうとした時、リザードマンの一体が向かってきた。 「やべっ!」  動けないミドリを庇おうとナオが走る。  それに釣られるように、他のリザードマンも武器を手にナオに襲い掛かろうとした。 「あっ……あぶな……」  ミドリが抱えた剣を持ってふらふらと立ち上がろうとした時、剣が鞘からすっぽ抜けた。  それを慌てて拾おうとして、ミドリが剣の柄を握った時、剣から金色の光が放たれた。 「うわっ!」  よろよろしながらミドリが持ち上げようとすると、その剣先から放たれた金色の光は偶然、ナオに襲いかかろうとしたリザードマンを貫いた。 「えっ……」  何が起きたのかミドリにはわからず、わからないまま、剣をなんとかしまおうと動かすと、今度は金色の光が並んだリザードマンを薙ぎ払った。 「グギャッ!」  悲鳴を上げてリザードマンたちが倒れていく。  ナオたちも驚き、リザードマンたちも驚き、何よりミドリが驚いていた。 「あ、あ、あの……」  ミドリは何か弁解をしようとしたが、言葉が出ない。  ただ、ミドリが剣を握ったままだったので、リザードマンたちは敵意ありと判断し、集合隊形を取って、ミドリに襲い掛かろうとした。 「うわわわわわっ!」  動物をしっしっとやるように、ミドリは両手で剣を握ってぺこぺこと上下に振った。  ミドリの動きはヘロヘロなのに、剣から出る黄金の光は強かった。  黄金の光がリザードマンを貫く、薙ぎ払う、蒸発させる。  ギヤアアアアアア!!! 「ご、ごめんなさあああい……」  ミドリはリザードマンの声にビビり、尻餅をついて座り込み、目をギュッと閉じて、小声で謝った。  だが、その声は黄金の光にやられたリザードマンの断末魔で、ミドリが恐る恐る周りを見た時にはリザードマンの死体がゴロゴロと転がっていた。 「え? え……?」 「……すっげええ!!!」  困惑するミドリの声をかき消すように歓声が上がる。 「なんだ、今の光、マジすげえ!」 「あんた最強かよ!」  リザードマンが倒れたと思ったら、今度は強面の人たちに囲まれて、ミドリは顔を青くした。 「あ、あの……あの……」 「お前ら、丁寧に接しな。その人は『運命(エアレーザー)の子』だ」  囲みをかき分けて、ナオがミドリの前に立つ。  金色の髪に左右違う赤色の目をしたナオに、ミドリは一瞬、目を奪われた。 (強面の人たちをまとめてるとは思えない、アイドルみたいな綺麗な顔をした人だな……)  そのナオがすっとミドリに手を伸ばした。 「オレの名はナオ。助けてくれてありがとう。名前を聞いていいか?」 「ミ、ミドリ……です……」  震える声でミドリはそう答え、助け起こそうとしてくれているナオの手を取ったのだった。
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