自殺病

1/3
前へ
/3ページ
次へ
 今日はなんだか静かだな…。 そう思いながら、私は一人、学校の廊下を歩く。 数年前から始まったその現象は、多くの国民を混乱させ、そして事態を悪化させた。 始まりは天皇一家が全員お亡くなりになってしまったところからだった。 昨日まで元気だった人たちが死んでしまう病気。 ソレが私たちを侵食していた。 病気とはいっても、本当の病気ではない。 かといって事故でも他殺でもない。 《自殺をしてしまう病気》が、流行していた。 人々はその病気を、自殺病と呼び、恐れた。 亡くなるその瞬間まで心身ともに健康だった人が突然自殺してしまうのだから、どれだけの名医でも手がつけられないでいた。 何も進展がないまま年数がたっていき、ついには情報源であるメディアも運営する側の人間が全員亡くなってしまったため途絶えてしまった。 だから、今日、何人亡くなったのかも、何人生きてるのかもわからないままだ。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加