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私は好奇心を抱いたのもあって、少し見て一礼して通り過ぎよう、と思い、外に出て彼らのもとに行くことにした。
少しずつ、忍び足で草むらを一歩ずつ踏んでいくほど心臓がうるさくなっていくのがわかる。
ネットで病死の場面を見たのは数か月前。
実際にこの目で見るのは初めてだった。
もう死んでいる彼らの目の前で私はその光景に立ちすくんでしまった。
落ちている首。胴体であろう体の近くには、歪んで使い物にならなくなっている包丁が、ここで何があったのかを物語っていた。
首を吊っている人も、目がくり抜かれている人もいる。
それなのに、いつもの仲の良さがうかがえる笑顔で口を動かしていることに、不気味で仕方がなかった。
すぐに立ち去ろうとしていたつもりだったのに、私は死んでいる五人の中にいる友達が口パクで言った「マック行こーよ」を聞き取った瞬間、泣き崩れてしまった。
なんで…希望に満ち溢れて、いつも元気を与えてくれる人たちだったのに…どうしてこんな目に合わなければならなかったのだろう。
この教師すらもういない世界に、マックなんてものは既に存在していない。
きっと彼らは、できなくなってしまった数年前のありふれた言葉と行動を死後の世界に持っていって幸せだった生活に戻ろうとしているんだ。
そう思うと涙が止まらなかった。
涙を枯らしてから、私は一礼してとぼとぼと歩いて学校の廊下に座り込んだ。
しばらくうなだれていたが、近づいてくる無数の足に力なく顔を上げる。
そいつらは、幽霊だった。
私たち生存者が家からあまり外に出なくなったのは、これも理由の一つだった。
とっくにこの世界はおかしくなっていた。
いくら晴天でも、廊下は薄暗いから、幽霊が集まるのも無理はないのかもしれない。
この霊たちが悪霊と普通の霊のどっちなのか、私にはわかっていた。
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