コール・フロム・バアチャン

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 一週間後の連休、私の招集により久々にわが家に家族が勢ぞろいした。ちょうどおばあちゃんの命日でもある。 「さあみんな、たんと召し上がれ!」  鍋いっぱいの小豆汁に、ふっくら焼けた熱々のお餅。押し入れに眠っていた餅つき機のおかげで簡単にお餅が作れた。おばあちゃんは、おじいちゃんが亡くなってからは(うす)(きね)の代わりにこれを使っていたのだ。 「わー、うまそう!」 「いい匂い!」  お(わん)にあんこをよそい、網の上でパリッとさせたお餅を乗せてあげると、みなキラキラと目を輝かせた。 「おいしーい!」 「お汁粉ってこんなにうまかったんだ」 「これは毎日でも食べられるね」  わいわいはしゃぎながら絶賛している子供達の脇で、夫が言った。 「うん、自販機のお汁粉缶とは思えないうまさだなぁ」 「もう、それは言わないでってば!」  本当なら缶ジュースを使ったことは内緒にしたかったが、みんなに「余ったお汁粉缶を持ってくるように」と指令を出していたので材料はバレバレである。もちろん小豆を煮て作ることもできたけれど、今回はこれを使うことに意味があるのだ。  私は圭祐(けいすけ)の隣りに座っている可愛らしい女性に声を掛けた。 「梨沙(りさ)ちゃんも、嫌いじゃなかったら遠慮なく食べてね」  梨沙と呼ばれた彼女は、みょーんと伸びていた餅を箸で切ってごっくんすると、明るい笑顔で元気よく返事をした。 「はい、とってもおいしいです! おかわりさせていただきますね!」 「良かった。つわりは大丈夫?」 「はい、おかげさまですごく食欲があるんです。ちょうどあんこが食べたくてたまらなくなっていたので嬉しい!」 「あら、奇遇。私も圭祐がお腹にいた時、なぜかお汁粉が食べたくて仕方なかったのよね」 「えっ、お義母さんも?」  その時、エプロンのポケットでスマホが鳴った。  おや? 着信画面を確認した私は、思わず居間の隅にある電話を見た。発信元はこの家の電話番号なのだ。
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