10人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
一週間後の連休、私の招集により久々にわが家に家族が勢ぞろいした。ちょうどおばあちゃんの命日でもある。
「さあみんな、たんと召し上がれ!」
鍋いっぱいの小豆汁に、ふっくら焼けた熱々のお餅。押し入れに眠っていた餅つき機のおかげで簡単にお餅が作れた。おばあちゃんは、おじいちゃんが亡くなってからは臼と杵の代わりにこれを使っていたのだ。
「わー、うまそう!」
「いい匂い!」
お椀にあんこをよそい、網の上でパリッとさせたお餅を乗せてあげると、みなキラキラと目を輝かせた。
「おいしーい!」
「お汁粉ってこんなにうまかったんだ」
「これは毎日でも食べられるね」
わいわいはしゃぎながら絶賛している子供達の脇で、夫が言った。
「うん、自販機のお汁粉缶とは思えないうまさだなぁ」
「もう、それは言わないでってば!」
本当なら缶ジュースを使ったことは内緒にしたかったが、みんなに「余ったお汁粉缶を持ってくるように」と指令を出していたので材料はバレバレである。もちろん小豆を煮て作ることもできたけれど、今回はこれを使うことに意味があるのだ。
私は圭祐の隣りに座っている可愛らしい女性に声を掛けた。
「梨沙ちゃんも、嫌いじゃなかったら遠慮なく食べてね」
梨沙と呼ばれた彼女は、みょーんと伸びていた餅を箸で切ってごっくんすると、明るい笑顔で元気よく返事をした。
「はい、とってもおいしいです! おかわりさせていただきますね!」
「良かった。つわりは大丈夫?」
「はい、おかげさまですごく食欲があるんです。ちょうどあんこが食べたくてたまらなくなっていたので嬉しい!」
「あら、奇遇。私も圭祐がお腹にいた時、なぜかお汁粉が食べたくて仕方なかったのよね」
「えっ、お義母さんも?」
その時、エプロンのポケットでスマホが鳴った。
おや? 着信画面を確認した私は、思わず居間の隅にある電話を見た。発信元はこの家の電話番号なのだ。
最初のコメントを投稿しよう!