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一話
立春が過ぎ、我が家の梅も見頃を迎えた。
数日前から今朝方まで降り続いた雪は庭を白く覆い、紅梅が映えて美しい。また白梅に積もった雪は花とも相まって、小鳥がたくさん枝に止まっているようだ。
幼い弟妹たちは、午後の暖かいうちなら庭で遊んでもよいと父上から許可をいただき、はしゃいでいる。
このところ、彼らは広間で遊びながらも、御簾越しに降る雪をうらめしそうに見ていることが多かった。室内では思いきり駆け回ることができぬゆえ、不満だったのだろう。
今は御簾も上げられ、広がった視界は柱に大きく縁取られている。まるで一枚の風景画のように、私たちの目を楽しませているのだが……
「まだか」
「いましばらく、お待ちくだされ」
今すぐにでも外遊びをしたい今若丸(異母弟)にとっては、景観よりも雪かきの進度のほうが重要らしい。
「できるだけ、はやくしてね」
「心を尽くしておりますよ」
目を輝かせた妹の催促にも優しく応対する下働きの者たちは、手早に雪の道を作っていた。
妹付きの女房は、彼らの会話を耳にしながら、慣れた手つきで小さな袂に襷をかけていた。それから別の襷で、衣の裾と袴が雪で濡れぬよう、巧いこと絡げている。
毎度のことだが、少々手間ではなかろうか。
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