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三話
「えいっ!」
「すごい!」
「とびました!」
今若丸が投げた雪玉の距離に、乙若丸(最年少の異母弟)と妹が歓声を上げた。
……すごいな。五歳とは思えぬ投げ様だったぞ。前世なら、球団から声が掛かったに相違ない。
階にて、内心で兄バカ全開の称賛をしながら、幼少組最年長の宗寿丸を目視で探す。……いた。
「…………」
雪投げ会場の反対側、少し離れたところで、一心不乱に雪うさぎを作っていた。黙々と手を動かす姿は、職人のようだ。
小さな両手いっぱいに雪を運び、立体的な楕円形を作って鼻先を軽く摘まむ宗寿丸。
様々な角度から眺め、納得のいくまで修正し、ようやく葉を耳の位置につけたかと思えば、また眺めて形を整える。
南天の実をつける際など、願掛けの目入れかというほど真剣な顔で、慎重に目の位置に差しこんでいた。
……名匠か。名匠なのか。六歳にして、何かを極めようとしているのか、宗寿丸よ。
いくつ作る気なのか、手が止まる気配はない。だが、そろそろ室内に入れねば風邪をひく。
私は、お付きの女房・近江に体の温まるものをと申しつけ、雪ぐつを履いて宗寿丸のほうへと向かった。
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