7人が本棚に入れています
本棚に追加
四話
「良い出来だな」
声をかけると、新たな雪をすくおうとしていた宗寿丸が振り返った。
「兄上」
「たくさん作ったな」
「はい。みなを作ろうと思いました」
一番大きな雪うさぎが父上として、母上、それから……私たち兄弟まで。なるほど、家族勢ぞろいか。
「あと二つか」
「はい」
「私も作ってよいか?」
「兄上もですか?」
「うむ。すべてを自らの手で完成させたいのならば、邪魔はせぬ」
憂慮すべきことはあるが、本人の意思は尊重したい。
宗寿丸は私を見つめ、ふわりと笑った。
「兄上といっしょに作りたいです」
「左様か」
私も頬を緩めた。だがすぐに、内心眉を寄せることとなった。小さな指先が赤くなっているのを見てしまったせいだ。
できれば今すぐやめさせたいが……宗寿丸の性質からして、やり遂げねば気がすまぬだろう。
「ならば、私は妹を作ろう。そなたは乙若丸を作るがよい。一番小さいゆえ、目の配置が難しいやもしれぬが」
「やりがいがあります」
妥協案を提示したつもりが、かえって職人魂に火をつけてしまったらしい。
最初のコメントを投稿しよう!