四話

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四話

「良い出来だな」  声をかけると、新たな雪をすくおうとしていた宗寿丸が振り返った。 「兄上」 「たくさん作ったな」 「はい。みなを作ろうと思いました」  一番大きな雪うさぎが父上として、母上、それから……私たち兄弟まで。なるほど、家族勢ぞろいか。 「あと二つか」 「はい」 「私も作ってよいか?」 「兄上もですか?」 「うむ。すべてを自らの手で完成させたいのならば、邪魔はせぬ」  憂慮すべきことはあるが、本人の意思は尊重したい。  宗寿丸は私を見つめ、ふわりと笑った。 「兄上といっしょに作りたいです」 「左様か」  私も頬を緩めた。だがすぐに、内心眉を寄せることとなった。小さな指先が赤くなっているのを見てしまったせいだ。  できれば今すぐやめさせたいが……宗寿丸の性質からして、やり遂げねば気がすまぬだろう。 「ならば、私は妹を作ろう。そなたは乙若丸を作るがよい。一番小さいゆえ、目の配置が難しいやもしれぬが」 「やりがいがあります」  妥協案を提示したつもりが、かえって職人魂に火をつけてしまったらしい。
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